世界遺産の熊野古道が通る和歌山県田辺市の山間部で、教科横断の授業による探究型教育と日本語と英語のバイリンガル教育に取り組む私立の小中一貫校「うつほの杜学園」が、2025年に開校を予定している。和食材発祥の地の1つであり、熊野古道という自然豊かな立地を生かして「食学」やフィールド体験学習にも取り組み、「世界の子どもたちや地域社会とつながる、ここにしかない学び」を目指す。
山間地にある「子ども中心の学びのコミュニティー」
うつほの杜学園は廃校となった小学校の校舎を改修し、2025年に小学校、29年に中学校が開校する予定だ。南紀白浜空港から車で約40分、最寄りのJR紀伊田辺駅から車で約35分、路線バスでは約45分ほどかかる山間地。古くから先人たちが歩んだ「巡礼の道」として知られる世界遺産・熊野古道が近くを通り、参拝者や外国人観光客でにぎわっている。
「うつほ」とは日本の古い時代に用いられたとされる神代文字の「ヲシテ文字」から取った。ヲシテでは「気体、大空のように目に見えないもの、始まっていないこと」とあり、また世の中のはじまりである「万物の源」を意味し、「学校が社会に開かれ、子どもを中心に人の和とエネルギーが集まる学びのコミュニティーとなり、人と地域、地球を元気にする」という思いが込められているという。
課題解決、英語、食を自然の中で学ぶ
同学園が目指すのは地球規模のグローバルと地域社会のローカル、両軸の視座を持った「グローカルリーダー」の育成という。その学びの特徴は、教科を横断した課題解決型学習と、日英バイリンガル教育だ。
課題解決型学習は「探究プロジェクト授業」と呼び、プロジェクトのトピックを学校が設定し、出された問いに対し、仲間と探究、実践、振り返りを繰り返しながらグループワークを進める。熊野古道の自然環境、歴史、文化、近隣産業や近隣コミュニティーなどをテーマに、小学校6年間で約36のプロジェクトに取り組む。
バイリンガル教育では、英語の授業以外、体育や美術などほかの教科でも一部英語で行うなどして子どもの英語力を鍛える。イタリアの学校との短期交換留学を通して世界とつながることで、アイデンティティー形成を行うという。
このほか、同学園が力を入れるのが「食学」だ。同学園は「食」は子どもたちがグローバル社会で生きていくうえで、生きる喜びを見いだし、未来を創造する大切なテーマであるとしている。和歌山県が醤油や梅干し、かつお節など日本の味の軸となる食材発祥の地であることを学び、学校近くの川で魚を捕ったり自分たちで栽培した米や野菜で料理をしたりして「食」に対する理解を深めるという。
さらに、子どもたちの体力づくりのため、立地を生かし、熊野古道ハイキングや高野山宿坊合宿をはじめアウトドア課外活動を行う。
校長には東洋大学国際学部グローバル・イノベーション学科の市川顕教授が兼任する予定。1学年は25人で、学費は年間80万~100万円に加えて設備維持費など。選抜は親子での面接を重視するという。
□うつほの杜学園
https://utsuho-academy.com/