早稲田大学は2026年までに推薦型入試を全体の6割に
皆さんは「総合型選抜」「学校推薦型選抜」入試に対して、どれくらいの知識を持っているでしょうか。
「なんか最近増えているらしいね〜」くらいにしか知識がないという人もいるかもしれませんが、はっきり言って、あと5年もしたら、一般入試で勉強して合格する人よりも総合型・学校推薦型選抜を突破して合格する人のほうが圧倒的に多くなると僕は思っています。
それくらい、今の大学受験は変革期に突入していますし、総合型・学校推薦型選抜は急激に拡大しているのです。
例えば、早稲田大学は、推薦型入試(総合型・学校推薦型選抜)の募集枠を通常では考えられないスピードで増やしています。2026年までに全体の6割へ引き上げる目標を掲げているのです。現在は一般入試が6割ですので、その数字が逆転するということです。早稲田大学といえば、やはり一般入試で合格する人が多いイメージがありますよね。それが逆転するわけですから、「びっくり」では済まないですよね。
現在でも法政大学は30%以上が推薦入試ですし、それ以外の有名大学であるMARCHや関関同立でも総合型・学校推薦型選抜の枠が増えているのが現状です。それくらい、これからの時代の入試のスタンダードになる可能性があるのです。
しかし総合型・学校推薦型選抜は対策が体系的になってはいません。一般入試のように、「これをすれば受かる」という勉強法がないことが特徴です。
そのため最近「総合型・学校推薦型選抜の対策って、どうすればいいですか?」とよく学校の先生や学生に聞かれることが多くなっています。
「将来どんな仕事に就きたいか」を考える前にやれること
そんな中で、今回の記事では皆さんに、総合型・学校推薦型選抜入試の対策としてご紹介したい方法の1つである、「生徒が、自分の知らない業種の人から話を聞く機会を設ける」という方法をお話ししたいと思います。
前提として、生徒は、社会のことを知る機会がほとんどないですよね。学校に通っているだけでは、先生以外の大人と交流することって本当に少ないと思います。職業体験かバイトくらいでしか、大人とは絡まないのではないでしょうか。
なので、「社会で仕事をしている人が、どんな仕事をしているのか?」ということについてきちんと理解している職業といえば、学校の先生と自分の親の職業くらいなのが実情ではないでしょうか。
しかし、総合型・学校推薦型選抜入試では厄介なことに、大学の先生から「あなたは将来、どんな仕事に就いて、どんな活動がしたいですか?」という質問をされてしまいます。
皆さん、おわかりだと思いますが、やはりこの質問に対する回答をする際に、「そもそも社会にはどんな仕事があるのか」がわかっていない状態というのは、致命的な情報のディスアドバンテージになってしまうことがあります。
岡山大学准教授の中山芳一先生は、こうした経験を「学校での各科目の勉強にとらわれない、非科目型の勉強」と呼んでいます。英語や国語といった科目の勉強ではない能力が求められるわけですね。
この前提を踏まえて、今回僕が実験的にやってみたのは、「アニメのプロデューサーから話を聞いてみる機会を設ける」ということでした。
オンライン学習塾を運営する企業、リザプロと提携してアニメ制作のプロデューサーさんを呼んでワークショップをしてもらうイベントを実施してみたのです。誤解しないでいただきたいのは、このイベントは「アニメのプロデューサーになりたい人に向けたイベント」ではないということです。
日本の文化としてのアニメや漫画コンテンツを海外に「輸出」していくことは、これからの時代どんどん必要になってきます。学生たちの中にも、「国際系の学部に行って、日本文化をどんどん広めていきたい」と考えている人も多いです。でも、そのアニメや漫画がどのように作られているのかって、実はあまり知られていないんですよね。
先ほど、「アニメのプロデューサーから話を聞いてみる機会を設ける」という話をしたのですが、そもそも皆さんは「アニメのプロデューサー」ってどんな仕事をしているのか知っていますか? たぶん「アニメのプロデューサー」という仕事は知っていても、具体的に何をしているのかはわからない人が多いと思います。
アニメを作るのは制作会社の仕事で、アニメの宣伝をするのはPRの会社がありますね。「いい作品を作る仕事なんじゃないの?」と思う人もいるかもしれませんが、それは「監督」の仕事です。そうすると、アニメプロデューサーは何をするのかはわからないですよね。僕も今回のイベントがなかったら、ずっとわからないままだったと思います。
「自分が見えていないところに、いろんな仕事がある」
実はアニメプロデューサーは、「調整」が仕事なのだそうです。アニメの企画を作ったり、制作スタッフ・制作会社を選んだり、資金調達・その調達した資金をどう配分していくのか、という調整をするというのが仕事なのだとか。
「あえて言えば、アニメを作るとか、アニメの広告をするとか、そういう表に見えている仕事『以外』の『すべて』がプロデューサーの仕事です」と、今回お呼びしたブシロードムーブ取締役の大貫佑介氏はおっしゃっていました。
忘れがちですが、そういう「裏方」の仕事というものも確かに存在しているわけですね。こうした人の話を聞くと、もちろん「アニメ」の裏側を知るということもできると思いますが、それ以上に「自分が見えていないところに、いろんな仕事がある」ということが理解できるようになると思います。
今回イベントに参加してくれた生徒の感想にも、「表に見えている仕事『以外』の『すべて』、という言葉を聞いて、社会には裏側にいろんな仕事があるということを知った」というものがありました。
自分の知らない世界があるということを知ると、人は一歩進めると僕は思います。「普段目にしているものがすべてだと考える」のではなく、あえて言えば「見えないところの仕事」「裏側の仕事」もあるのだということを知る機会は、総合型・学校推薦型入試を受験する人にとって大きなプラスになると思います。皆さんぜひ参考にしてみてください!
(注記のない写真:metamorworks / PIXTA)