「金融検査マニュアル」が今年度の終わりに廃止されるようだ。策定当事者だった私にとっては意外なニュースだった。あの非常事態用に作ったマニュアル、まだ生きていたのか。
自分も関わっていたことだが、1990年代後半から2000年代初頭の金融行政があまりに厳しかったために、銀行界には受け身の意識が染み付いてしまった。お上から言われたことを最低限やり安定経営を続けよう、というミニマムスタンダードの行動原理を取るようになった。銀行界はこの平成期で“草食系”になってしまった。
私の後に就いた金融庁長官たちも、この意識を変えようと苦労してきた。正しい意味でリスクを取り、経済に付加価値をつけるのが金融界の役目であると、前長官の森信親氏などはかなり明確に方針を打ち出していた。彼は当たり前のことを言っていたように私には思える。
しかし銀行にはうまく伝わっていないようだった。突然そんなことを言われて、どうすればいいのか。ベストプラクティスを目指してリスクを取っても、結局、やけどを負ってしまうのではないかと狼狽している。
当の銀行界は、ビジネスの中身はちゃんと変えてきたと不満に思うかもしれない。確かにこの30年で見れば、大手銀行における手数料収入と伝統的な貸し出しとのウェートは変化しているだろう。国内外の事業割合もそうで、海外の収益比率は高まっている。体質がそっくり変わったわけではないが、ある程度安定した経営が続けられるよう微調整を積み重ねている。
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