僕は人一倍、「この勉強、意味あるの?」という問いを持ち続けて勉強から逃げ続けてきた子どもでした(笑)。

僕のほかにも「この勉強、意味あるの?」という思いを抱えている子どもたちは多くいます。何のためにやっているのかわからないから、やる気になれないんです。そんな子には「この勉強はこんなふうに役に立つよ!」という話をすれば、「そうか、そんな意味があるのか、それなら学んでもいいんじゃないか」とやる気になってくれるはずです。

では、どんな話をすればいいのか。僕は、「この勉強、意味あるの?」と質問をしてくる子を説得できるようになりたいと思い、普段からこの質問に対する答えはないだろうかと考えながら街を歩いたり、本を読んで、答えを探し続けています。

今回は、そんな僕が見つけた「この授業面白そう」「この勉強楽しそう」と思わせる「つかみ」のテクニックについて、いくつかお話をさせてください。先生ならば授業、保護者の方なら家庭学習の最初の5分に使ってもらえればと思います。ここでは国語、英語、数学の例を紹介します。

西岡 壱誠(にしおか・いっせい)
現役東大生。1996年生まれ。偏差値35から東大を目指し、オリジナルの勉強法を開発。崖っぷちの状況で開発した「思考法」「読書術」「作文術」で偏差値70、東大模試で全国4位になり、2浪の末、東大合格を果たす。そのノウハウを全国の学生や学校の教師たちに伝えるため、2020年に株式会社「カルペ・ディエム」を設立。全国5つの高校で高校生に思考法・勉強法を教えているほか、教師には指導法のコンサルティングを行っている。また、YouTubeチャンネル「スマホ学園」を運営、約1万人の登録者に勉強の楽しさを伝えている。著書『東大読書』『東大作文』『東大思考』(いずれも東洋経済新報社)はシリーズ累計38万部のベストセラーとなっている
(撮影:尾形文繁)

国語は「ラブレター」と「けりをつける」

まずは、国語です。国語は漢字の面白さについて語るといいかもしれません。

例えばラブレターで使う漢字として、「思う」と「想う」、どちらのほうが適切か?という問いなどは多くの子に興味のあることかもしれません。中高生も大学生も恋愛の話は好きですからね。

「思う」は自分の頭で感じたことを表す言葉で、「思案する」とか「思考する」というように「考える」と同じような意味で使われることが多いです。

対して「想う」は、自分がこうしたい!という強い思い・願望・意思を伝えるときに使う言葉です。「理想」と言ったら「こうなりたい!」という強い思いですよね。それと同じように、恋している相手に「あなたを思っています」と言っても、普通に「君のこと考えてたんだよ」というくらいのテンションになっちゃうんです。

だからラブレターを書くときには「あなたを想っています」と書いたほうが、「想い」が伝わりやすいのではないでしょうか。こういう話をすると漢字の面白さが伝わりますし、「だから漢字って大事なんだよ」と話せば多くの子に刺さると思います。

僕はよく「『思』とか『想』を使った熟語を思いつく限り考えてみよう!」という話もします。そうすると、「思」と「想」の使い方・どんな言葉になることが多いのかがわかり、語彙力にもつながっていきます。もっと言えば「『思』と『想』、英語だとどう訳せると思う?」と、英語の勉強にもつなげてあげるのもいいと思います。英語では、どちらも「think」になりますが、逆に日本語の表現の多さに気づくこともできます。こういう広がりのある勉強法は皆さんにお勧めできるものですね。

また、古典についても面白い話があります。「古典なんか勉強して意味あります?」というのがTwitterでも話題になっていた時期がありましたが、古典を教える先生としては、これに対する回答を用意することはとても難しいのではないでしょうか。

でもやっぱり、古典単語って現代の日本語にも大きな影響を与えているんですよね。例えば、物事が終わるときに「けりをつける」という言葉を使うことがあります。この「けり」って、いったいどういう意味なのか、皆さんは知っていますか?

これは実は、キックという意味の「蹴り」ではないんです。

古典を勉強したことがある人なら、助動詞で「けり」という言葉があるのは知っているはず。古典の勉強でもよく、文章の中には、「なりにけり」のように、言葉の終わりに「けり」をつけることで「文章の終わり」を示しているものがあったはずです。

実は、今でもその名残で「けり=終わり」という意味で使われていて、「けりをつける」というのは「文章の終わりをつける」や「結末をつける」という意味になるのです。

このように、つかみとして古典単語が今でも残っている例を話すというのは有効だと思います。ほかにも「まめまめし」のように日常生活では使いませんが、「まめな人」というようにまじめという意味で今でも使う場合がありますよね。こんなふうに古典単語をフックにするというのはありだと思います。

英語は「アートネイチャー」を使え!?

英語に興味を持ってもらうためには、僕らが普段いかに英語を使っているのかということを知ってもらうのがいちばんです。

日本という国は、英語圏でもないのにたくさんのカタカナ語が使われていて、ほかの国では考えられないほど英語を使っています。「プロミス」みたいな企業の名前だったり、「ペデストリアンデッキ」みたいな建築物などの名称だったり。それに気づいてもらうのです。

日常生活で使われている英語を「つかみ」にするのもお勧め(写真:node / PIXTA)

例えば、アートネイチャーという企業は、増毛や育毛を専門に行っている会社です。かつらを作ったり、人工的な髪で増毛する会社なわけですが、何で会社名が「アートネイチャー」なのでしょうか。「アート」って芸術ですよね。ということは、直訳すると「芸術的な髪」なわけですが、でもこれってあんまりぴんときませんよね。「アートネイチャー」ってどういう意味だと思いますか?

実はアートって、「芸術」という意味だけじゃないんです。アーティストって、絵を描いている人以外にも、本を書く人もカメラマンも、またはフィギュアスケートの選手を「氷上のアーティスト」と呼ぶこともありますよね。アートは、芸術や美的価値という意味のほかにも「自然の模倣」「人が行うことすべて」「人為」などの意味もあります。「自然=ネイチャー」に対する反対語が「アート」なのです。

だから、「アートネイチャー」は相反する2つの言葉をくっつけたものであり、「人工で自然なものを作り出す」というのが正しい訳になります。髪は自然なものですが、それを人工の力で自然なものにする……そう解釈することもできます。もちろん、これは僕の想像が多分に含まれているわけですが、しかし「アート=芸術」だけじゃない!というのはしっかりと理解してもらう必要がありますよね。

ほかにもこんな例があります。学生たちはFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)やソーシャルゲームなどのオンラインゲームでパーティーを組んでプレーしていますよね。パーティーという言葉はよく使われる言葉で、みんなで集まって騒ぐ宴会のことを指すこともありますし、ゲームなどで1つの団体を指して「パーティーを組む」なんて言いますよね。

でも、パーティーって実際はどういう意味なのか、大抵は「集まり?」というくらいしか理解していなかったりします。

「パーティー」は英単語の「part」からきています。partというのは全体に対する一部分のことを指しているので、「このパート(部分)は彼が担う」なんて使い方をします。そこから派生して、「多くの人の中で一部の人が集まる」から宴会、「多くの人の中で一部の人だけでチームを組む」から団体のことを指すのです。パートタイムジョブと言えば「その人のいろんな時間の中で一部の時間だけ働く人」のことを指しますが、これも一部ですよね。パーテーションと言えば、部屋と部屋とを仕切りで分けるもののこと。これも全体の中で一部をつくるものです。

数学は「1ダース=12の秘密」を伝えよう

数学に関しても、日常生活とどうつながっているかを教えてあげるといいと思います。

例えば、12という数字はすごい数字です。何てったって、世の中にたくさん存在します。1年は12カ月ですし、星占いは12星座であり、数量の単位は1ダース=12個です。世の中のいろんな所で12という数字が使われています。これはいったい何でだと思う?という話をするのです。

12という数字は、2×2×3でできていて、約数が非常に多い数です。20までの数字の中でいちばん約数が多いですね。だから、2でも3でも4でも6でも割り切れます。そう考えると、例えば12個のお菓子があったとしても、2人でも3人でも4人でも6人でも均等に配分することが可能です。

これが10個だったら無理ですよね。10個のお菓子は3人や4人では割り切れず、「俺のほうに1つ多くよこせ!」というようにトラブルが発生してしまう可能性があります。だからこそ、12というのは多用されるもので、その次の13は素数で(つまり約数がその数字自身と1しかないので)、不吉な数であると認識されているわけですね。このように、単なる数字であっても、いろんな意味を与えることができるんですよね。

いかがでしょうか? 学生たちを引きつけるには、やはり「最初の5分」で「日常生活」とその勉強のつながりを教えてあげるといいと思います。そのためには、日常生活の中から、国語や英語、数学、理科、社会の要素を探してみるといいのではないでしょうか。神社に行けば日本の歴史につながり、花火を見れば化学につながります。勉強ってどこにでもあるのです。

「この勉強、意味あるの?」という問いの答えの中で、その科目の勉強の面白さや、やる意義を教えてあげてください!

(注記のない写真: IARC/ PIXTA)