新渡戸文化、STEAM教育実践の場「VIVISTOP」始動 子どもも大人もワクワク、ドキドキが大切

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2019年より学校改革を始動した新渡戸文化学園は、「社会の役に立ち、幸せをつくるハピネスクリエイターの育成」を掲げ、児童・生徒たち自身が対話を重ね教え合う形で授業を進め「自律型学習者」を育てる独自のカリキュラムで話題だ。20年4月には、企業や地域と共にクリエイティブラーニングスペース「VIVISTOP」を運営するVIVITAと連携。学校内に教室や教科、学年などの枠をなくし、教師も児童・生徒も共に作り、共に学ぶことのできる「VIVISTOP NITOBE」を開設し、STEAM教育を実践する。新渡戸文化学園プロジェクトデザイナー、VIVISTOP NITOBEチーフクルーで小学校図工を教える山内佑輔氏、21年春から講師に加わったICTデザイナーの海老沢穣氏に、同校のSTEAM教育と未来について聞いた。

子どもたちの声から始まった、「映像制作」のクラブ活動

「今日の授業の最後に、みんなが作った映像を発表し合います。発表は15時30分ごろから始めるので、それまでに、各自自由に撮影、編集してくださいね」

先生の言葉を聞いた瞬間、子どもたちはiPad片手に教室を飛び出し、三々五々校内のさまざまな場所に散らばっていった。

デジタルツールを使って作品作りを行うクラブ活動「デジタルクリエイションクラブ」。iPad片手に自分の好きな場所で映像を作る子どもたち

ここは、新渡戸文化学園のクリエイティブラーニングスペース「VIVISTOP NITOBE」。レーザーカッターなどデジタルファブリケーション機材が置かれ、近未来的な空気が流れる一方で木のいすや机が置かれ、ぬくもりも感じられる。心地よさに加え、その時間、そこに存在する人たちの創造的なエネルギーが軽やかに循環していることが感じ取れる、独特な空間だ。

休み時間や放課後に、児童・生徒が自由にものづくりをする場として開かれ、一人ひとりの「つくりたい!」を実現する場として存在している。21年7月からは、土曜日にイベントを通して地域の子どもたちにも開放していく予定だ。

日中は、図工・美術、総合的な学習の時間などの授業、放課後を過ごす「アフタースクール」のアート系のプログラムに加え、アート、デジタル系のクラブ活動(4〜6年生の希望者対象)などが行われている。

毎週木曜日の6時間目、デジタルツールを使って作品作りを行うクラブ活動(4〜6年生)「デジタルクリエイションクラブ」の授業が、このスペースで行われている。

担当するのは、山内佑輔先生と海老沢穣先生。子どもたちに「指示を出す」「押し付ける」のではなく、「見守り、子どもたちからの問いにその都度対峙する」「授業を共に楽しむ」といった姿勢で向き合う姿が印象的だ。

約束の時間に戻ってきた子どもたち。ある子は自ら制作したアニメ作品を、ある子は友達同士で学校を舞台にした学園ドラマ風の作品を、みんなの前で順番に発表し合った。編集の時間が足りず同じような映像が延々と繰り返される作品にも、大人から見たら不可解に思われるような作品にも、「よい」「悪い」の評価はせず、拍手を送る。

先生は、子どもたちからの問いにその都度対峙する見守りが基本で、授業を共に楽しむといった姿勢で向き合っている

「デジタルクリエイションクラブ」のこのような活動は、「映像を作りたい!」という子どもたちの声から始まった。今後はシナリオライターを養成する「シナリオセンター」とコラボし、プロの技術を学びながらシナリオを作り、より本格的に映像作りの授業をつくっていくという。

STEAMの本質は、子どもも大人もワクワク、ドキドキすること

GIGAスクール構想により「1人1台端末」環境が全国のほとんどの小・中学校で整備された。ICTを活用することにより生まれる余裕時間を、実社会での問題発見や課題解決に生かす教科横断的な「STEAM(Science、Technology、Engineering、Arts、Mathematics)教育」に注目が集まっているが、「『これはSTEAMだけど、あれはSTEAMではない』など一部分をフォーカスして議論するのは違うと思っていて。STEAMの本質は、2021年4月に本校で開催したオンライントークセッションに登壇いただいたSTEAM教育者・中島さち子さんがおっしゃるところの『Playful』。子どもも大人(教師)もワクワク、ドキドキして本気で問いを立て、何か形にしていこうと試行錯誤していくことが、自然と教科を超えた学び=STEAMにつながっていくのだと思います」と、山内氏。

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