勝ち方や負け方の中に、人間性を伸ばすチャンスがある
ラグビー校は「ザ・ナイン」と呼ばれるイギリスの伝統的なパブリックスクール9校のうちの1つで、ラグビー発祥の地として知られている。1823年、同校に通うウィリアム・ウェブ・エリス少年がフットボールの試合中にボールを抱えて走り、自主的にラグビーのルールを制定したというエピソードがきっかけだ。ラグビーというスポーツ名は、まさにラグビー校の名称に由来している。
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ダービー校長はRSJでの学びにおいて、ラグビーさながら生徒がまとまってチームワークを発揮し、1つのプロジェクトに取り組む活動を積極的に取り入れていると話す。
「わが校は“The Whole Person, The Whole Point”を理念に掲げ、人間の全体性を重視するHolistic Education(ホリスティック教育)を念頭に置いています。ラグビーのようなチームスポーツは、仲間と力を合わせて勝利を目指してプレーし、最終的に勝敗がつきます。勝ち負けの結果がフォーカスされがちですが、勝ち方や負け方も非常に大事な部分。勝ち方や負け方の中にも、相手に尊厳を持ってプレーすることを学ぶなど、一人ひとりの人間性を伸ばすチャンスがあるのです」
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Rugby School Japan(ラグビースクールジャパン)初代校長
これまで25年以上にわたり英国の全寮制、通学制の学校に携わる。英国ラグビースクール本校では14年間ハウスマスター(寮長)を務めた
ホリスティック教育の方針は、チームスポーツのみならず、音楽や演劇など多様なジャンルで生かされているという。
「音楽のカリキュラムでは、生徒が大勢の前で発表する機会を毎週設けています。生徒はステージに立つことでどんどん自信をつけ、個性を高めていきます。演劇においても、舞台上で緊張する仲間をお互いに励まし合い、勇気を持ってプレッシャーを乗り越えようとする姿が見られます」
RSJには国際規格のラグビー場「Webb Ellis」をはじめ、充実したトレーニングジム、25m×6レーンの屋内温水プール、レコーディングスタジオ併設の音楽室、演劇室などを完備。生徒が好きなことに熱中し、才能や個性を伸ばせるプロ仕様の設備が整っている。
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
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RSJはつくばエクスプレス「柏の葉キャンパス駅」から徒歩3分ほどの場所にあり、都心から約30分とアクセス良好。「わが校が柏の葉に立地しているのは非常にラッキーなこと」とダービー校長は強調する。
「都心で行われている演劇や展覧会に子どもたちを連れて行けますし、隣接する千葉大学や東京大学の方々と意見交換する場もあります。また、柏の葉エリアはコミュニティ活動が盛んです。多国籍の子どもたちが1人残らず、地域社会との関わりを持てることがすばらしいと感じています」
具体的には、地域のクリーンアップデーに参加してゴミ拾いをしたり、柏の葉オープンイノベーションラボ「KOIL」の協力のもと、子どもたちの将来を見据えてどのようなビジネスをスタートアップするべきかなどのレクチャーを受けたりしているそうだ。
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ボーディングスクールでも、自宅通学のオプションを用意
RSJへの入学は随時受け付けており、入学が決まった場合、日本のスタイルに合うよう3つのオプションが用意されている。週7日間寄宿する「Full Boarder」、週5日間寄宿する「Weekly Boarder」、さらに寄宿料がかからない自宅通学「Day Pupil」も可能だ。なお、自宅通学の生徒にも「ハウス」(寮)の部屋の一角が個別に割り当てられ、学習机に荷物を置いたり着替えたりできる。
「ニーズに応じて通学スタイルを選べる点は、保護者からも好評です」とダービー校長。寄宿する際、部屋は個室または2~4人部屋から選択できる。利用料金はいずれも同じだが、大半の生徒が大部屋を希望するそうだ。
「10代の年頃の子どもたちからは、親よりも友達と長い時間を過ごしたいという声をよく聞きます。この希望は、寮生活を送ることで丸々かないます。寮生活を通して、一生ものの友情をはぐくめ、プライスレスな経験になるでしょう」(ダービー校長)
寮では学年の異なる生徒同士の交流も活発だ。寮の1階にあるオープンスペースには卓球台やピアノ、チェスなどがあり、コミュニケーションが生まれるきっかけになっている。
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寮の人員配置やフォロー体制は非常に手厚い。男女別の寮にはハウスマスター(寮長)をはじめ、それぞれ3名以上のスタッフが住み込みで常駐している。それとは別に、ハウスアシスタントと呼ばれる人々が毎日寮に通っている。子どもたちの保護者の代わりとして、忘れ物はないか、宿題は済んでいるかなど、きめ細かく面倒を見てくれるという。
生徒たちにはチューター(担任の先生)も個別についており、もし生徒に何か困ったことがあった場合は、保護者とすぐ連絡が取れる体制を敷いている。また、ナースも24時間体制で常駐し、子どもたちの健康面を支えている。「子どもたちが寮生活を心底楽しめるように、多くの大人の目で見守っています」(ダービー校長)
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毎日の食事は重要なポイントだとダービー校長は話す。「現在15の国籍を持つ子どもたちが集まっていることもあり、ベジタリアンやビーガンへの配慮やアレルギー対応には細心の注意を払っています。また、子どもたちがメニューに満足しているかどうかなどの意見をヒアリングし、改善を重ねています」
寮のニーズは非常に高いといい、2024年秋に新しい男女寮、2025年秋にさらに男女寮がオープンする。
一人ひとりに、自分という映画の主役になってほしい
RSJの教員はほぼイギリス人で構成されている。募集をかけたところ、応募が殺到したとダービー校長は教えてくれた。
「イギリス人の教員にとって、日本で働くことは魅力的に映るようです。昨年は20名の枠に対して、なんと1000名もの応募がありました。イギリスから優れた教員を呼び寄せることを第一条件として、慎重に採用を行っています。生徒たちにとって教員の存在は大きいですよね。彼らが大人になっても、お気に入りの先生のことはずっと覚えているものです。学校運営における最も大切な資産は教員なのです」
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RSJでは英国ラグビー校と同様に、「A-Level(英国ケンブリッジ大学傘下の教育機関『Cambridge International』が提供している国際資格で、大学教育を受ける前の16~19歳の学生を対象とした高校卒業資格および大学入学資格)」のカリキュラム履修を通じ、グローバル人材の育成を目指している。
「A-Levelは自分の興味のある分野をより深く突き詰めていける、すばらしいシステムだと思います。高校の3年間、得意なことに特化してハイレベルな勉強をすることで、大学進学後に自然な流れで研究分野を絞れるでしょう」(ダービー校長)
最後に、RSJの卒業生にどのような大人になってほしいのかを尋ねると、ダービー校長は次のように述べた。
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「自分でビジネスを始めるにしても、サラリーマンとして働くにしても、一人ひとりが、自分という映画の主人公になってほしい。わが校のモットーの1つに“レジリエンス(困難を乗り越えて回復する力)”というものがあります。もしうまくいかないことがあっても、へこたれずに、多くの引き出しを持ち合わせていればリカバリーできるはず。困難から立ち上がるためのスキルを学び、恐れない心を持ちましょう」
(文・撮影:せきねみき)