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不安な現代人こそ「礼」が必要になる意外な理由 われわれは日常を失いつつある

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  • 中島 隆博 東京大学東洋文化研究所教授
  • 國分 功一郎 東京大学大学院総合文化研究科准教授

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熱い議論を交わした中島隆博氏(左)と國分功一郎氏(右)(撮影:五十嵐和博)
新型コロナウイルスによって、これまで気づかれていなかった格差、貧困、差別、非倫理的な大量消費、制度疲弊、神話化された科学主義などの弊害が噴出。それらへの真剣な手当てが求められているにもかかわらず、国際的な連携を模索するよりも、国家的な統制を強める方向性が出てきている。
中国の文化大革命や戦前の日本、ナチ・ドイツの独裁体制のような個人よりも全体を優先する全体主義の渦に、世界は再び巻き込まれようとしているのではないか。そうした全体主義を克服するにはどうすればよいのか。世界中で注目を集めるドイツの哲学者、マルクス・ガブリエル氏との対談集『全体主義の克服』を出版した中島隆博氏と、國分功一郎氏という著名な2人の哲学者による対談の後編をお届けする。
前編:コロナ禍で急増「自分を監視したい人々」の怖さ

聖書より古い歴史に衝撃を受けた欧州

中島:前編では、概念が旅をするということをお話ししました。このことのすごく面白い具体例があります。16世紀以降にイエズス会やその他の宣教師が世界中に行くと、聖書よりも古い歴史があることに衝撃を受けます。例えば中国などは、神の創造の手前に歴史を持ち、しかも神なしで社会がなんとか回っているわけです。

その情報がヨーロッパに行って、知識人たちを刺激します。ライプニッツもその一人ですね。彼は20歳から亡くなるまでずっと中国の本を読んでいます。最晩年に書いたのが『中国自然神学論』でしょう。

哲学者の坂部恵先生が千年に一人の天才とおっしゃったライプニッツが、中国のほうをずっと見続けていたとはどういうことなのか。それは中国の概念が旅をしているわけですよね。つまり、朱子学と言ったほうがわかりやすいかと思いますが、宋から明にかけて成立した性理学の概念が旅をして、「理性」のようなヨーロッパ近代的な概念を洗練する一つのエンジンになったのです。

中国と西洋との出会いということでいえば、2018年にガブリエルさんに初めて会ったとき、いきなり中国哲学の話をされて度肝を抜かれました。

ヨーロッパの中国学者なら中国に詳しいのは当たり前なのですが、欧米哲学を専門にする人で中国哲学を理解している人には、会ったことがありませんでした。また、東西の哲学を単純に「比較」すればよいわけでもありません。それは前提となるものをほぼ温存してしまいます。

ところが、ガブリエルさんは中国学の枠組みを軽々と飛び越えて、ドイツの哲学伝統に深く根差し、フランスの現代思想も、アメリカの分析哲学もよくわかったうえで、普遍化を目指す論を立てているのです。

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【ガブリエル氏が中国哲学を読んでいた!】

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