ニクソン訪中とは似て非なる「米朝首脳会談」 本当に核武装を放棄させられるのか?
それでも多くの専門家は、正恩氏が核武装を放棄するのは疑わしいと考えている。
米シンクタンク「ファウンデーション・フォー・ディフェンス・オブ・デモクラシーズ」のアンソニー・ルギエロ上席研究員は「残念ながら、正恩氏が核武装を放棄するという戦略的決断を下したかどうかは不明だし、今後の交渉が非核化という最終目標につながるかも分からない」と語り、今回の動きは目立った進展がなかった10年前の交渉の再現を思わせるとの見方を示した。
なし崩しの懸念
トランプ氏と正恩氏が約束した朝鮮半島の「完全な非核化」については、北朝鮮側が米政府の核武装解除の定義を受け入れたわけではないとの解釈が広がっている。
かつて米政府当局者として北朝鮮との外交交渉を担当したエバンス・リビア氏は「共同声明には重要な要素がほぼゼロで、新鮮味にも乏しい。願望込みの目標が列挙されている。これは北朝鮮にとって勝利で、何の意義も生み出さなかったと見受けられる」と手厳しい。
トランプ氏はツイッターで、大統領が北朝鮮トップと会談すること自体が米国にとって大損だという主張を「負け犬の遠吠え」になぞらえた。また同氏は、会談後の記者会見で「正恩氏が本気で非核化を望んでいると思う」と述べ、北朝鮮側の主要な要求である米韓合同軍事演習の中止にも前向きな姿勢を表明した。
ただ直近の3代の大統領はいずれも北朝鮮から非核化の約束を得たが、すべて反故にされてきた。
専門家の間でも、今回の首脳会談は、1972年にニクソン大統領が中国を訪れて長年にわたる米中対立の打開に道を開いた動きには、到底及ばないとの声が聞かれる。
トランプ氏の主張では、北朝鮮が非核化に実際に取り組むまで米国は制裁を続けることになる。だが緊張が緩和されることで、中国と韓国は北朝鮮に約束を確実に守らせる上で不可欠な制裁措置を完全に履行し続けそうにない。
今年に入って米国務省の対北朝鮮交渉担当者を辞めたジョセフ・ユン氏は、北朝鮮が近く「米国がわが友人であるなら、制裁を緩めてくれても良いではないか」と言い出し、非核化プロセスの枠組みそのものがなし崩しになってしまう事態を懸念している。
(Matt Spetalnick、David Brunnstrom記者)
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