デジタル時代における出版社・編集者の真価 東洋経済オンライン メディア戦略セミナー

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スペシャルディスカッションII
デジタル時代における出版社・編集者の真価

講談社
代表取締役社長
野間 省伸氏

出版のデジタル化を積極的に推進してきた講談社の野間省伸氏は「最初は社内外から批判されながら、私が旗振りをしたが、今は面白そうだから、と新しいことを始める社員が出てきた」と、社員の趣味から事業化されたサッカー総合サイト「ゲキサカ」、アイドルなどのVRコンテンツ子会社設立といった動きを紹介。AIも備えた鉄腕アトムのロボットを作る分冊百科にも触れ「ロボットを通じて、どうコンテンツを流すかも考えたい」と述べた。こうした紙から離れた動きに「紙を捨てたわけではないが、データをパブリックにすることがパブリッシング(出版)と考えれば、いろんな出発点、出口があっていいのではないか」と指摘。「いろいろなことをやると、別の面白い話が来る」と続けた。ビジネス目線でも、ウェブメディアのコストは雑誌より安いので「面白いコンテンツを作ろうとする時のハードルが下がった」として「情熱を持ってやりたいという社員からのアイデアの芽をつぶさないことが大事」と訴えた。

ほぼ日
代表取締役
糸井 重里氏
ほぼ日の学校長
河野 通和氏

1998年に始めたウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を運営する、ほぼ日の糸井重里氏は、海外で直接サッカーを見た素人が、専門記者にも発見できないような情報を書き込んでいることに驚き「情報伝達ルートの変化に面白みを感じた」とインターネットの魅力を語り、「面白い所には面白い人が集まる」と、人が集まる”場”としてのインターネットという、ほぼ日立ち上げの発想を振り返った。”場”の呼び名はプラットフォーム、メディアなどさまざまだが、コンテンツを仕入れ、編集し、表現するのが、ほぼ日のプロセスであり、アイデアをモノにすれば商品というコンテンツにつながるというように「すべてをコンテンツと考えれば楽になる」と述べた。

同社独自のプラットフォームとして、最新のAR(拡張現実)技術を搭載したビーチボール状の地球儀に、スマートフォンアプリを通してさまざまな情報を表示する「ほぼ日のアースボール」を紹介。コンテンツ充実に向けて「載せたい情報を持つ個人、会社などいろいろな所と組みたい」と呼びかけた。

古典を学ぶ場を提供する、ほぼ日の学校の河野通和氏は「古典に好奇心を持つ人、学び損ねた人の、もやもやした欲求をすくい取ってコンテンツにするのが編集者の仕事。紙とは異なるライブ空間の学校でも面白いことができる」と、アトム、アースボールにつながる意義に言及した。