低価格だけを追求すれば、日高屋などの既存チェーンとの競争に巻き込まれてしまう。大切なのは、手頃な価格で独特の味を楽しめ、甘味まで食べられるという総合的な価値を伝えることだ。価格が多少高くなったとしても、首都圏で見ればまだまだ安く、さらに顧客がそれに見合う満足感を得られれば、十分に支持される可能性はある。
東海地方のソウルフードは、首都圏でどう受け止められるか
最後に、最大の課題について触れておきたい。それは、スガキヤのラーメンそのものが首都圏の人々に受け入れられるかという点だ。
スガキヤのラーメンは、豚骨をベースに魚介の旨味を合わせた独特の和風豚骨スープが特徴である。白濁したスープは一見すると九州豚骨ラーメンのようにも見えるが、味わいは大きく異なる。ライトな豚骨のダシに魚介の風味がふわりと広がり、後味は軽やかだ。
豚骨をベースに魚介の旨味を合わせた独特の和風豚骨スープが特徴の、スガキヤのラーメン。ライトな豚骨のダシに魚介の風味がふわりと広がり、後味は軽やか(写真:筆者撮影)
首都圏で人気の濃厚豚骨魚介ラーメンとも違うし、博多ラーメンとも違う。強烈なインパクトで勝負するというより、何度食べても飽きにくい、日常に寄り添う味わいなのである。
東海地方の人にとっては、この味こそがスガキヤであり、幼い頃から慣れ親しんだソウルフードだ。しかし、首都圏の人々にはその記憶がない。つまり、東海地方では「懐かしさ」という大きな付加価値を持つ商品が、首都圏では純粋に味と価格、利便性で評価されることになる。ここが最も難しいところだ。
オープン直後は、東海地方出身者やラーメンファンが足を運ぶだろう。SNSでも話題になり、行列ができることも十分に考えられる。実際、長津田店ではその光景が見られた。しかし、重要なのは半年後、1年後である。話題性が落ち着いた後も、地元の家族連れや学生が「今日はスガキヤにしよう」と自然に選んでくれるかどうか。
スガキヤは2026年に創業80周年を迎えた。長い歴史の中で培ってきた「ラーメンと甘味」という独自の業態は、今の首都圏市場でも十分に戦える可能性を秘めている。神奈川から始まった再挑戦の行方に注目したい。


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