有料会員登録
ライフ #愛おしきレトロアパレルの世界

「時給500円の高校生が7000円で購入」→「40年経っても綺麗なまま」…ものづくりの街が生んだ「ミキハウス」一着の愛しい記憶

8分で読める
1983年頃の写真。40年以上大切にしている「ミキハウス」のベースボールシャツが持つ物語とは――(写真:由紀さん提供)
2/5 PAGES

社員の着ていたシャツに一目ぼれ

由紀さんは子どもの頃、母の手作りの洋服をよく着ていたという。妹とおそろいのワンピースを着て家族でよく出かけたのは懐かしい思い出だ。

母は、ミキハウスから縫製の内職を自宅で請け負っていた。1983年ごろ、高校生だった由紀さんは、母のもとへ内職用の生地を持参する若い男性社員が着ていたベースボールシャツに一目ぼれした。

このシャツ、いわゆる「ミキハウスらしい」大きなロゴがない。そのさりげなさも由紀さんが気に入った点だった。さらに、シャツとしてだけでなく、ブルゾンやカーディガンとしても着られることが決め手になったという。

母がミキハウスの内職をしていた縁もあり、このシャツに一目ぼれすることになった(写真:由紀さん提供)

その場で「私もこれが欲しい!」と母に言うと、「じゃあ自分で買いなさい」と言われた。次に社員が自宅を訪れる際に持ってきてもらい、アルバイトで貯めたお金で購入した。母の社員割引が適用され、7000~8000円ほどだったという。由紀さんにとっては思い切った買い物だった。

「当時のアルバイトの時給は500円だったんです。近所のパン屋さんやコロッケ屋さんで学校終わりの17時から19時まで、毎日2時間くらい働いていました」

当時は今と違って、夜遅くまで営業している店が少なかった。それゆえ、頑張ってアルバイトをしても、多くて稼ぎは月に2万円程度。洋服は月に1枚買えるかどうか、という状況だった。

ミキハウスのシャツに一目ぼれした時点で「着回し」まで考えていたのは、買える服が限られていたからなのだろう。由紀さんも、雑誌を読みこみ、どんな服と組み合わせるかを日常的に考えていたという。

由紀さんは、苦笑混じりに当時を振り返った。「でもあの頃は、洋服を買う以外、ほかにお金を使うことがなかったんですよね」。

雑誌とお茶と洋服でバイト代が消えた高校時代

現代の若者は、携帯代やさまざまなサブスクリプションにお金がかかる。一方、1980年代の若者の生活はもっとシンプルだった。

3/5 PAGES
4/5 PAGES
5/5 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数