「過去6カ月間、SaaSの終末論に関するバカげた戯言を聞かされてきた。しかし、これはソフトウェアの終わりではなく、人間にすべての作業を行わせるソフトウェアの時代の終わりだ」
クラウド上でCRM(顧客関係管理)システムを提供するセールスフォースは9月15〜17日、米サンフランシスコで年次イベント「ドリームフォース」を開催した。同社会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏は基調講演で、冒頭のように切り出した。
1999年にベニオフ氏らによって設立された同社は、「ソフトウェアの終焉(The End of Software)」をキャッチフレーズに掲げ、当時の業務用ソフトで常識だった複雑なインストールやメンテナンス、定期アップグレードの在り方に風穴を開けた。
インストール型ではなくネットを介したクラウド型により、ソフトウェアが水道や電気のように提供され、顧客は電気代を毎月払うような感覚で利用する。そんな世界を目指したセールスフォースは、今や世界のCRM市場でオラクルやマイクロソフトを抑え、2割のシェアを握るSaaS企業の代表格となっている(IDC調べ、2025年)。
新常識をさらに覆す衝撃
しかし、26年初にアンソロピックが投入した高度なAIエージェント機能は、セールスフォースが築いてきた新常識をさらに覆す衝撃を与えた。人間がAIに自然言語でリクエストを出せば、AIエージェントがソフトウェアの操作や構築さえも代替する時代になったからだ。SaaS不要論は日に日に高まり、同社を含めたSaaS関連株は軒並み下落。26年半ばまでの株式市場は一時、悲観一色となった。
それでも、ベニオフ氏は世界中から約5万人が集まるイベントの場で強気の姿勢を示した。
同氏が強調するのは、「AIエージェントが人間に代わって複雑な業務を実行する時代へ移行しているのであり、アプリケーションそのものが消滅するわけではない」という点だ。具体的には、AIがすべてのソフトウェアを飲み込むという説に対し、「AIモデルは本質的に確率論的(probabilistic)なシステムにすぎない」と指摘。「企業がビジネスを行うには、唯一の正しいデータやアクセス権限、業務ルールを管理するセールスフォースのような確定論的(deterministic)なシステムが不可欠だ」と喝破している。
例えば、アパレルのオンラインサイトを運営する会社のカスタマーサポート業務を想定してみよう。
同社では業務効率化のため、顧客からの問い合わせに24時間対応する最新のAIエージェントを導入した。しかしAIが確率論的に動いていた場合、
一方で、裏側に確定的な業務ルールやシステム制御が組み込まれている場合、AIエージェントは柔軟な自然言語で顧客に寄り添いながらも、「着用済みの商品は返品不可」といった社内規定に合わせて正しく動くことができる。
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