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リスク分散の時代における企業制度改革の本質とは何か? 経済安全保障の内在化が求められる理由(上)

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企業制度改革と経済安保は密接に関係する(写真:tomcat/PIXTA)
  • 北村 滋 元国家安全保障局長、北村エコノミックセキュリティCEO

INDEX

ウクライナ戦争の長期化と中東紛争の拡大はエネルギーと海上輸送路の脆弱性を露呈させ、中国による経済的威圧は、相互依存そのものが圧力の手段となりうることを示した。半導体、人工知能(AI)、量子といった先端技術を巡る大国間競争は激化し、輸出管理や重要鉱物の供給は戦略の道具と化している。

さらに、戦後の自由貿易体制を主導してきたアメリカ自身が国益優先へと舵を切り、開かれた国際経済システムという前提は大きく揺らいでいる。経済と安全保障を切り分けて論じることは、もはや極めて困難になりつつある。

経済安全保障推進法、外国為替及び外国貿易法(外為法)、重要経済安保情報保護活用法、能動的サイバー防御法制が経済安全保障という行政分野において主として官と民との関係を規律するものであるとすれば、この変化は、私法の分野、すなわち政府が近年相次いで進める企業制度の見直しにも影を落としている。

企業制度に関連する、4つのガイドラインやガバナンス・コード、行動指針などを見てみよう。具体的には、①「経済安全保障経営ガイドライン(第1版)」の策定(2026年1月23日) 、②コーポレートガバナンス・コードの2026年改訂(同年7月21日) 、③「企業買収における行動指針」の解釈・ポイント・Q&Aの提示(同年7月30日) ④「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案」(同年3月18日) 、である。

①経済産業省が策定。企業に対し、経済安全保障をコンプライアンス上の対応にとどめず、取締役会および経営陣が担う経営課題として位置づけることを求めている。ガイドラインは、自律性確保の取り組み、不可欠性確保の取り組み、経済安全保障対応におけるガバナンス強化の3部構成をとり、付録としてチェックリストを備える。技術流出対策の具体的手法については、経済産業省「技術流出対策ガイダンス」(25年5月23日)も参照。

②金融庁・東京証券取引所が策定。改訂版は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目的とする「攻めのガバナンス」の文脈で、研究開発、人的資本、知的財産等の無形資産への投資および取締役会の機能強化を重視している。

③経済産業省が策定。企業価値を将来キャッシュフローの割引現在価値として把握しつつ、買収提案の検討において、実現可能性、ディスシナジー、許認可リスク等を踏まえた取締役会の判断過程と株主への説明の重要性を示している。

④法務省の法制審議会 会社法制(株式・株主総会等関係)部会での試案。株主提案権、株主総会資料の電子提供制度、株式・株主総会制度の見直しを対象としている。

これらは、所管も目的も異なり、経済安全保障を正面から掲げているのは最初の1つだけである。

にもかかわらず、並べてみると同じ問いが浮かび上がる。経済安全保障の時代において、企業価値とは、なお純粋な市場概念であり続けるのか、という問いである。

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