この部屋には、家族や近所の人が立ち入ることはなかった。介護事業者の出入りもなく、マンションという住まいの性質上、地域の見守りもない。男性の異変に気づき、施設入所へこぎつけた今回の依頼主は、血縁としては遠い、住人のいとこの子どもにあたる男性だった。
「身内の方がいらっしゃらなくて。私の父親のいとこになる方なんですけれど、ご兄弟もみなさん亡くなられていまして」(依頼主)
頼れる人はいない。だから自分がやるしかない。依頼主はそう話していた。
「身寄りがない老人」の後始末は誰がするのか
住人の男性は施設で暮らし、この部屋の後始末は、遠縁の依頼主が引き受けた。家の権利書など探してほしい書類もあり、それも依頼主が請け負っていた。近しい身内はいなかった住人だが、最後には頼りになり、実際に動いてくれる人がいた。それだけでも、恵まれたケースなのだと二見氏は言う。身寄りのない人の現場は、たいてい行政からの依頼になるからだ。
「身寄りのない方だと、だいたい役所から依頼が来るんですよ。事情を聞ける相手が誰もいないので、故人がどんなに大切にしていたモノが出てこようと、基本的には全処分になってしまいます」(二見氏)
事情を知る人がいなければ、何を残すか決める人もいない。作業中に通帳や印鑑といった貴重品が出てきても、扱いは変わらない。
「一応、依頼主に報告はします。でも、だいたい『捨ててください』って言われます。取っておいても仕方がない、ということなんでしょう」(二見氏)
身寄りのない人の部屋は、誰にも事情を聞かれないまま処分される。身寄りがあるかどうかは、生まれつき決まっているわけではない。誰もがいつか、“身寄りのない1人”になりうる。


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