愛波:資格を取ってアメリカで睡眠コンサルタントとして活動した後、日本でもこの知識を広めようと思いました。ただ、始めた当初は「赤ちゃんを泣かせて寝かせるなんて」と、かなりバッシングを受けたのも事実です。
窪田:日本には、夜泣きや寝かしつけについて、独特の価値観があるからでしょうか。
愛波:はい。日本は「夜泣きがあって当たり前」「母親は苦しまないといけない」といった空気感が、まだ根強くあるような気がします。寝かしつけは親が頑張るもの、夜泣きはいつかなくなるもの、と受け止められがちです。
窪田:そういった感覚はあると、私も感じます。
文化と科学を、いったん切り分けて考える
愛波:大前提、親も睡眠を取らなければいけません。一方で、睡眠のあり方は家庭によって違いますし、育児で大切にしたいことも異なります。なので私は、「一律の正解」を押しつけるのではなく、「その家庭に合った方法」を一緒に考えたいと思っています。
窪田:私自身も、文化的に大事にしたい価値観は、もちろん尊重されるべきだと考えています。ただ、その「価値観」と「科学的なエビデンスに基づいて今わかっていること」は、別のカテゴリーとして考えたほうがよいですよね。
愛波:価値観を否定することと、選択肢を増やすことは違う、ということですね。
窪田:そうです。例えば「無痛分娩」も、その出産方法を選ぶかどうかは、価値観の問題です。一方で、メリットやデメリットは、感情論ではなく事実をもとに議論できる。そのように一歩引いて選択肢を検討できる社会のほうが、子育てをする人にとってもよいはずです。
愛波:おっしゃる通りですね。医療の世界でも同じようなことは起こりますか?
窪田:はい。医療でも、昔の常識がそのまま残ることがあります。私の専門でいえば、「軽い度数の眼鏡のほうが近視が進まない」という考え方ですね。これは、数十年前には一般的な考えでした。
愛波:今は違うのでしょうか。
窪田:今は、完全矯正の眼鏡のほうがよいというエビデンスが多く出ています。睡眠についても医療についても、情報を更新し続けることが必要です。
愛波:その通りですね。新しい知識を、親子が少し楽になる選択肢として見てもらえたらと思います。


