50代に差しかかると、「自分はもう会社から必要とされていないのではないか」という思いにとらわれ、「そろそろ先が見えてきました」と口にする人は少なくない。同期入社の誰かが役員に昇進すれば、悲愴感は一段と強まるだろう。若い頃には気にもとめなかった社内の序列に加え、収入や社会的地位における格差を強く意識するようになる年代でもある。
しかし、こうした環境に置かれたからといって、自らを「終わった人」と結論づけてしまうのは早計だろう。近年、早期退職制度に応じる形だけでなく、自ら新しい職場を見つけて転職していく50代が増えている。総務省統計局の「労働力調査」(2022年)でも、55〜64歳層を中心に転職者比率は緩やかな上昇傾向にあった。
外部から人材をスカウトして登用する手法は、これまで経営幹部や執行役員クラスなどのエグゼクティブ層が主な対象として捉えられがちだった。業績が低迷した企業が再建を託すために、他社で豊富な実績を上げたプロ経営者を最高経営責任者(CEO)や最高財務責任者(CFO)といった幹部ポストへ招き入れるケースは、その典型例と言えるだろう。
役員クラスの外部招聘はメディアでも大きく取り上げられやすいため、「経営人材の引き抜き」というイメージばかりが先行してきた面は否めない。
50代の転職に「強い追い風」は吹いているのか
中間管理職であっても極めて優秀な人材がスカウトされる例自体は、以前から決して珍しい現象ではなかった。ところが、ビズリーチやリクルートダイレクトスカウトに代表されるハイクラス向けの採用プラットフォームや、企業が直接求職者にアプローチする「ダイレクトリクルーティング」が普及したこともあり、スカウトの対象が一般的なミドル階層へと拡大している。
大手企業を中心に、人に仕事をつける日本型の「メンバーシップ型雇用」から、仕事に人をつける欧米型の「ジョブ型雇用」への移行が進み、即戦力の中途採用と親和性が高まっている。その結果、社内で部長ポストに届かなかった50代であっても、社外から直接声がかかる機会が増えている。

