大病にむしばまれやすい50代にとって、気持ちよく働ける環境を選ぶことは、最高の健康管理と言っていい。これを怠れば、キャリアの停滞だけでなく、医療費支出という資産管理上の大きな損失にもつながりかねない。
もし50代にして転職するのなら、自分の市場価値を、社内での肩書ではなく、社外でも通用する具体的な能力として棚卸しする作業が出発点になる。AI(人工知能)が定型業務を代替する時代だからこそ、取引先との条件交渉やクレーム対応、現場で培った暗黙知の継承といった、マニュアル化しにくい経験値を明確に言語化しておきたい。
「弱いつながり」が大きな成果につながる
続いて、押さえておきたいのが、社員の紹介を通じて人材を獲得する「リファラル採用」の存在だ。一般には若手向けの手法として語られがちだが、年齢が上がるほど、この重みは増す。
企業から見れば、中高年の中途採用候補者は「現場で機能するか」「周囲とうまくやっていけるか」という不確実性が大きい。書類選考や面接だけでは見極めきれない部分を、社内の誰かが「一緒に働いた経験がある」「信頼できる」とその人物を推薦してくれれば、採用側のリスクは大きく下がる。だからこそ、在職中からどれだけ社外に「自分を知っている人」を確保できているかが重要になる。
例えば、取引先や業界の集まりで顔を合わせた相手との関係を、平時から緩やかに保っておけば、社内の出世競争に敗れたとしても、それが転職の入り口になる。こう書くと、「強いつながり」が重要と思われがちだが、実は社外の人との「弱いつながり」が人脈を構築するうえで意外と重要なのだ。
アメリカの社会学者・マーク・グラノヴェターは、人脈について分析を行い、「弱いつながりの強さ」を理論化した。斬新なアイデアや新しい経験や方法を必要とする場合は、「弱いつながり」の人と交流したほうがより大きな成果につながることを証明したのである。例えば、転職においては、「弱いつながり」の人を通して仕事を見つけた比率が83%と圧倒的に高かった(マーク・グラノヴェター〈渡辺深訳〉『転職―ネットワークとキャリアの研究』〈ミネルヴァ書房、1998年〉)。
50代は重大なキャリアの分かれ道に遭遇する。今の会社に居続けるのか、それとも心機一転、転職するのか。その一大決心こそが、出世競争の先にある10~15年先の「勝利」を決定づけるのではないだろうか。
他チームに移籍して、大谷翔平選手さながらの「サヨナラホームラン」で逆転勝利を夢見るのも悪くはない。だが、同じチームにとどまり、着実に出塁して得点を重ねていくプレーもまた、同様に魅力的で価値のある選択なのだ。

