50代の中途採用で企業が評価するのは、「出世競争を勝ち抜いた実績」ではない。長年培ってきた実務経験や人脈、そして現場の仕事を特別な指導なしにすぐこなせる腕前だ。加えて、倫理や法律に触れない範囲で「他社の知見やノウハウ」をもたらしてくれる点も、大きなメリットとして評価される。
だが、この潮流を「50代全般に強い追い風が吹いている」と捉えるのは過大評価だろう。年齢を理由に機会が閉ざされる度合いが、以前より少しずつ緩んできている。その程度の、小幅な動きだと捉えるのが実態に近い。
ここからはあえて保守的な見方を示したい。なぜなら、今の会社に残り続けるという判断も、十分に賢い選択でありうるからだ。
会社に居続けられるのも1つの優れた才能
そういえば、ある大企業に勤め続けてきた知人が、こんな話を笑いながらしていた。
「会社にしがみつくのも悪くないですよ。優秀な人は皆さん、スカウトされたり、起業したりして会社を辞めていく。だから、私みたいな、出来の悪いサラリーマンでも役員になれました」
冗談のわからない人は、この発言を真に受けて、「なんて傲慢なやつだ。こんな『働かないおじさん』がいるから会社がダメになるんだ」と批判するかもしれない。が、それは少々無粋というものだ。大喜利に例えれば、「座布団一枚」であろう。
同じ会社に居続けられるのも、1つの優れた才能である。その「芸風」は人それぞれだが、優秀な人材が自ら去っていく中で生き残り、独自の居場所を築く姿勢は、孫子の兵法がいうところの「戦わずして勝つ」の実践であり、マイケル・ポーターの「残存者利益の獲得」にも通じる発想である。この結果、この人はトップマネジメントという最高意思決定の権限を手中に収め、より大きな仕事ができるようになったのだ。
さらに、この「居続ける」という選択には、笑い話では済まない現実的な損得勘定も隠れている。

