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平日の午後3時。広島県福山市の中心部、福山駅南口から徒歩7分の場所に立つ、地下2階地上9階建ての元百貨店。建物の中を1本の通路が貫き、自転車を押した高齢女性が通り抜けていく。通路脇では放課後の中高生が教科書を広げ、隣のコワーキングスペースでは若い起業家がノートパソコンを叩いている。吹き抜けから差し込む光の下では、ベビーカーの親子が楽しそうにドーナツをほおばる――。
ここは3度、沈んだ場所である。
1992年、「中四国最大の百貨店」福山そごうとして華々しく開業したこの建物は、総工費300億円、大理石の柱にも1本1億円をかけた、バブル絶頂期の産物だった。しかし、バブル崩壊とともに客足が遠のき、2000年に閉店。
その後も「福山ロッツ」「リム・ふくやま」として、2度にわたり民間事業者が再生を試みたが、いずれも10年以内に閉店している。誰も使いこなせなかった「巨大なハコ」が、福山市の大きな負担になっていた。
しかし今、4度目の挑戦として2022年9月に開業した施設、「iti SETOUCHI(イチセトウチ)」として蘇っている。年間400回ものイベントが開かれ、約7万4000人が訪れるように。全国から視察が相次ぎ、建物は「グッドデザイン・ベスト100」にも選ばれた。
驚くのは、ここを手掛けたのが、商業施設の運営経験がまったくない地元の電気工事会社であり、改修費がわずか5億円程度だったことだ。大企業もうまく運営できなかったハコを、なぜ「電気屋」が蘇らせられたのか。
物語は、約34年前のバブル絶頂期に始まる。
「イタリアの小さな山がひとつ消えた」福山そごうの栄光
