全館空調は設けなかった。代わりに、建物の中心にあるエスカレーターを活用した。この空間を「吹き抜け」と見立て、屋上の換気口で自然換気できるようにしたのだ。同時に、公園で使われるような金網でエスカレーターを囲み、屋外感を強めた。
周辺地域との物理的な連続性も考慮した。建物内を6つの街区に区分し、それぞれが建物の周りとつながるように配置。商店街に近いところに飲食店エリア、住宅街側にオフィスゾーン、美術館や福山城の側にイベントやものづくりを行うスペース、という具合だ。街区ごとに素材も変えた。「オフィスエリアにはガラスパーティションを用いて洗練された空気感を、飲食エリアにはガルバリウム鋼板で飲食小屋のような雰囲気を作っています」(竹内さん)
そして、最も大きな決断が、「竣工」という概念の放棄だった。
「完成したと言い切った瞬間に、施設の生命活動は止まります。常に未完成で常に変わり続ける場所にすることで、みんなの挑戦の場になるのです」(島田さん)
正式には「未完成」のまま、開業の日が近づいていた。
予算5000万円オーバー、それでも扉は開いた
2022年9月30日、「iti SETOUCHI(イチセトウチ)」は工事中の未完成の状態のまま「半分開業」を掲げてオープンした。
