一方で、チェーンカフェの店舗網は広がっている。スターバックス コーヒー ジャパンの国内店舗数は26年3月末時点で2116店、コメダホールディングスは26年2月期末時点で国内外合わせて1150店に達する。ただし、チェーンカフェといっても、その役割は一様ではない。セルフサービス型のカフェは短時間利用や作業需要と親和性が高く、フルサービス型の喫茶チェーンは滞在や会話の場として支持されてきた。
それでも、新宿の駅前で、声を張らずに会話でき、急かされずに時間を過ごせる場所は限られる。椿屋珈琲が立っているのは、その空白地帯だ。
新宿の夜、椿屋珈琲で起きていること
新宿東口から徒歩数分。ルミネ側から地上に下り、駅前の喧騒を抜けると白い看板が見えてくる。階段を上がると、空気が変っていく。暖色の照明が木製テーブルと深緑のソファを照らし、BGMは会話を邪魔しない音量に抑えられている。
夕方18時台、見える範囲では客の9割が2人以上での利用だった。女性同士、仕事帰りとおぼしきスーツ姿の男性、落ち着いた年代の女性グループ客。多くの客が会話を目的に滞在しているように見えた。PCを開いている客は見当たらない。カップが空になってもしばらく会話を続ける客が目立った。回転を急かす設計が、この店には存在しない。
