インドの強硬策を察知した日本は、さまざまな懐柔策を講じた。まず、E5系に代わり、JR東日本が開発中の次期新幹線E10系をインドに導入する案を打ち出した。E10系は2027年以降に完成し、2030年度に日本国内での営業運転を目指している。
また、E10系導入に先立ち、総合検測車と訓練やデータ収集用のE5系を各1編成インドに譲渡することも決めた。さらに、2025年1月から1年間にわたってNHSRCLの職員16人を受け入れて、新幹線運転士研修を実施するなど、ソフト面での強化も打ち出した。これらの提案にインド側は謝意を示したものの、結果として入札は実施された。
欧州勢が信号システムを落札
なぜ日本は入札を阻止できなかったのだろうか。一連の動きについて日本コンサルタンツに説明を求めたが、「NHSRCLとの間に守秘義務がある」という理由で回答は得られなかった。なお、JR東日本によれば、今回の信号システムの入札やインド製車両の選定に日本コンサルタンツは関わっていないという。
最終的に受注したのは、ドイツのシーメンスが加わる企業連合だった。2025年6月にシーメンスが発表したリリースによれば、同社はETCSレベル2に基づく信号および列車制御システムの設計、設置および15年間にわたるメンテナンスを行うという。プロジェクトの期間は54カ月(4年半)なので、2029年末に完成する。つまり全線開業と同じタイミングだ。同リリースには「最高時速350kmでの列車運行を支える」という記載がある。E5系、E10系の最高速度を超えているのが気になる。シーメンスは時速350km運転が可能な車両を開発している。
また、「ETCSレベル2は世界的に認められた信号基準であり、現在50カ国以上で使用されている」「メイク・イン・インディアへのコミットメントを反映したものだ」といった記述が見られる。これらの文面からインド側の狙いが透けて見える。すなわち、世界標準であるETCSに対応した高速車両をインド国内で製造し、輸出にもつなげるといったシナリオだ。
