日本が受注に成功した理由は、技術面の特性によるものだけではない。プロジェクトに対する巨額の「円借款の供与」が重要な要素である。計画当初に約1兆ルピー(約1.67兆円)と試算された事業費は、その8割が円借款による年利0.1%、償還期間50年(据え置き期間15年)という破格の低利融資で賄われることが2015年の覚書に記された。国の経済規模から見てもフランスには日本のような資金は準備できなかった。円借款は日本の最高の切り札だった。
また、インドは「メイク・イン・インディア(インドで作ろう)」という国内製造業の振興策を掲げており、高速鉄道車両を自国で製造し、将来は他国に輸出するという目標を掲げていた。日本はこの意向を受け入れ、覚書には車両や設備の製造を含む新幹線システムのメイク・イン・インディアを段階的に推進することも記載された。
2027年8月に一部先行開業へ
このプロジェクトは「インド高速鉄道公社(NHSRCL)」が事業主体となり、資金調達、建設、維持、管理を行うこととなった。日本コンサルタンツはインド高速鉄道における軌道・車両基地等の施工監理などを担当し、新幹線方式による建設の砦となる。当初は2023年の開業を目指し、2017年の起工式を迎えた。
だが、高速鉄道建設のための土地収用が遅れ、2023年の開業は幻に終わった。とはいえ工事が頓挫したわけではない。2024年にすべての区間の土地収用が完了し、現在は「2029年末までの全線開業」という新たな目標が定められている。
2026年4月時点における工事の進捗状況は、全線のうち基礎部分85%、橋脚84%、橋桁69%、道床29%となっている。全線開業に先立ち、区間のほぼ中間に位置するヴァピ―スーラト間(約100km)について、インドが建国80周年を迎える2027年8月に先行開業を目指すことも決まった。軌道の整備については遅れを取り戻しながら着実に進んでいる。
最大の懸念は「車両」である。
