既述したように、FIFAの汚職スキャンダルを受け、W杯開催地は各協会の投票で決まる方式に変わった(関連記事はこちら)。「アンチ」が多いサウジアラビアにとっては、不利なシステムだ。
しかし、サウジは他国が真似できない“別の道”を選ぶ。
FIFA会長に「急接近」
MBS皇太子がインファンティーノ会長と初めて大々的に公の場に現れたのは、2018年。サウジアラビアのジッダに招待し、FIFAとサウジアラビア総合スポーツ庁(現スポーツ省)の協力強化を話し合う会談を開いたのだ。
デンマークのスポーツ倫理研究所「Play the Game」は、これを「戦略的投資と裏工作の始まり」と指摘している。
同年6月、再び2人は公の場に姿を現す。
2018年ロシアW杯の開幕戦、2人はロシアのウラジミール・プーチン大統領とともにロシア対サウジアラビアを観戦した。
ニューヨークタイムズ紙のタリク・パンジャ記者の記事「インサイドマン:FIFAはいかにしてサウジアラビアにW杯をもたらしたか」によると、この頃からインファンティーノ会長は、まるでサウジアラビアの「協力者」かのような行動を取り始める。
2020年秋、インファンティーノ会長はローマでイタリアのジュゼッペ・コンテ首相と会談し、イタリアサッカー連盟の会長も参加した。
パンジャ記者の同記事によると、インファンティーノ会長は「2030年W杯を3大陸で共催するプランがある。サウジアラビアとエジプトがすでに手をあげた。ヨーロッパのパートナーを探している。イタリアはその候補になりうる」と伝えたという。
結局、イタリアが断ったため別の国が必要となり、インファンティーノ会長は2021年9月の国連の会合でギリシャに声をかけて、エジプト・ギリシャ・サウジ共催構想が浮上した。
両者の接近は止まるところを知らず、2021年にインファンティーノ会長がサウジアラビアのスポーツ省のビデオに出演。2022年にはMBS皇太子とFIFA会長は、ジッダで開催されたボクシングの試合を一緒に観戦。FIFA会長とサウジの距離は、明らかに“特別な関係”へと変わっていった。

