「ポピュリズムを生み出し、繰り返し社会を独裁主義へと向かわせてきたのは、小さすぎる政府だ」ノーベル賞経済学者スティグリッツによる解説

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経済市況
社会を独裁主義へと向かわせてきたのは、大きすぎる政府ではなく、小さすぎる政府である(写真:NOBU/PIXTA)
大きな政府よりも小さな政府の方がいいと耳にしたことはないだろうか。しかし、実際にポピュリズムを生み出し、繰り返し社会を独裁主義へと向かわせてきたのは、大きすぎる政府ではなく、小さすぎる政府だという。
「市場が効率的」と主張する人たちは何を間違えているのか? ノーベル賞経済学者のスティグリッツ教授の新刊『スティグリッツ 資本主義と自由』の中から一部抜粋・編集の上、お届けする。

市場は効率的なのか?

市場は効率的な結果をもたらすという理論についてはどうだろう? 保守派の経済学者は絶えず、アダム・スミスの言う「見えざる手」を引き合いに出してきたが、スミスがそれに課した条件を忘れていた。そのため、競争市場が効率的であることを証明しようとして行き詰まってしまった。

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その理論はごく限られた条件下でのみ正しいが、そんな条件はいかなる経済にもあてはまらない。つまり、市場は効率的だということを証明しようとする試みは、市場の限界を「露呈」するばかりだった。いわゆる市場の失敗である。

その失敗とは、競争の制限(大半の企業が価格を設定するある程度の力を持っている)、市場の不在(たとえば、大半の主要リスクに対する保険を購入できない)、不完全な情報(たとえば、消費者は市場にあるすべての商品の質や価格を知っているわけではない、企業は従業員になりうるすべての人の特徴を知っているわけではない、貸し手は借り手になりうるすべての人が返済できるかどうかを知っているわけではない)などを指す。

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