アルバイト25年、時給1200円から上がらない現実 声優しながらバイト掛け持ち、睡眠は5時間未満

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しかし、努力が実を結ぶとは限らないのが芸能の世界だ。周囲からは「30歳までに売れればいい」と言われたものだが、トモヤスさんは今も声優業だけでは食べていけない。レギュラーやゲーム収録などの仕事があれば別だが、ギャラがゼロの月もある。

アルバイトによる収入は手取りで月30万円ほど。労働時間を考えると低すぎる水準だし、家賃に約10万円がかかるが、声優との両立は可能にもみえる。しかし、実際にはオーバーワークせざるを得ない“業界の闇”があるという。

トモヤスさんによると、若手や、自身のような小規模な事務所に所属する声優が仕事を得るためには、キャスティング権を持つディレクターや音響監督が講師を務める事務所や学校主催のレッスンに参加しなければならない。その費用が毎月10万円はかかるという。

「(違法な)内職商法みたいなものですよね。でも、こちらも悪しき習慣とわかってて金を払ってる。実際、それで仕事ももらえているので……」とトモヤスさんは言葉を濁す。

置き去りにされている非正規労働者

最近は年齢のせいか腰痛や瞼の痙攣といった体の不調が増えた。声優を続けるには、働く時間を減らして睡眠時間を増やしたいが、収入水準は下げられない。となると時給を上げてもらうしかない。

特に夜間の居酒屋は働き始めて25年近くなるが、時給は1200円からほとんど上がっていないという。現場ではシフトや売り上げの管理を任されることもあるなど人間関係は良好なので転職はしたくない。一方で過去には賃金の未払いもあり、会社組織としては問題も多く、1人で賃上げを求めても門前払いされるのが落ちだろう。

そこでトモヤスさんが試みたのが、1人でも入れるユニオン(労働組合)に加盟して会社と交渉することだった。全国のパートや派遣労働者たち約3万人とともに「非正規春闘」という取り組みに参加、「一律10%以上の賃上げ」を求めたのだ。

非正規春闘は、個人加盟できる労働組合などが集まってつくる実行委員会が昨年からスタート。今年は107社に要求を行い、このうち59社から賃上げ回答を引き出したが、残りの48社はゼロ回答だった。賃上げ幅も平均すると、3、4パーセントにとどまったという。大手企業を中心とした春闘が「歴史的な高水準」などと評価される陰で、非正規労働者が置き去りにされている実態が浮き彫りとなった。

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