一方、男性で前から手を入れる拭き方をしていた人は32人(23%)で、多くは手を背中側からまわす方法をとっていた。
「前から手を入れる拭き方」が女性に多いことについて、「女性は生理時に陰部を拭くことが多いので、そういう習慣がつきやすいのかもしれません」と赤石さんは分析する。
では、この拭き方のなにが問題なのか。
実は、前から手を入れると、指の動きの関係で後ろから前(肛門から尿道方向)に拭くことになるため、大腸菌などが尿道に入り込みやすいと想像される。
女性の場合、帯下(おりもの)などにも病原体が混ざっていることもあるので、この拭き方が日常的に繰り返されれば、尿路感染症を引き起こすリスクは高まる恐れがある。
実際、特に40~59歳の女性で、この「前から手を入れる拭き方」と尿路感染症との間に、“偶然ではない有意な関連性”が示唆されたという。
ちなみに、この年代の女性に尿路感染症が多いのは、ほかにも理由が考えられると、赤石さん。
一般的に、尿路感染症はトイレを我慢しすぎたり、脱水があったりすることでも発症リスクが上がる。40歳を過ぎると体内の水分量が少なくなるため、水分摂取が足りていないと脱水になりやすく、さらに、若い頃より尿の勢いが弱くなることで、尿道内に侵入した病原体を排出する能力も低下して、リスクが高まる。
では、尿路感染症を防ぐためには、トイレの後、どう拭いたらいいのだろうか。
「前から後ろに向けて拭くのがベスト。背中側から手をまわせば、そのように拭きやすいです」(赤石さん)
一度身に付いた動作を直すのは大変かもしれない。ただし、これまでたびたび尿路感染症を経験している女性や、発症リスクの上昇が懸念される中年期女性は、この拭き方に改めることで、感染リスクを軽減できる可能性がある。
温水洗浄便座の使い方と感染リスク
近年、多くの家庭のトイレで温水洗浄便座が使われている。そのため、拭き方だけでなく、温水洗浄便座によるお尻の洗い方も尿路感染症に影響を与えているかもしれない。
赤石さんは今回の研究終了後、温水洗浄便座の使い方についても追加調査を実施したという。
その結果、人によってさまざまな使い方をしていることがわかった。「拭かずにいきなり洗浄し、そのあとに拭く人」や、「一度拭いてから洗浄する人」、「トイレットペーパーは一切使わず、洗浄と温風乾燥だけする人」などだ。
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