日本人は「超円安」の恐怖がわかっていない! 忍び寄る「通貨危機」への準備はできているのか

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ここ数年の世界的なインフレは戦争などによる資源価格の高騰もあるが、同時に起きた通貨変動の影響がある。その背景には、アメリカの中央銀行にあたる「FRB(連邦準備制度理事会)」の急激な金利上昇がある。金利上昇に合わせて、アルゼンチンやトルコ、アジア諸国などから、金利の高い米ドルに資本が流出して通貨が売られたわけだ。

超円安で生活はどう変わる?

今後、円安がさらに進んだ場合、われわれの生活はどうなるのか。すさまじいインフレを体験した国の人々の話を整理すると、大きく4つのポイントに絞られる。

●国全体が貧しくなる
 激しいインフレが起こり、企業業績が急激に悪化していく。賃金の上昇をはるかに上回るインフレが生活を襲い、ほとんどの国民は生活苦に陥る。とりわけ、資産を自国通貨(=円)だけで運用してきた人は一気に財産が半分に減少してしまうので、生活も苦しくなる。

●政府や地方自治体の財政が急激に悪化する
 財政赤字はさらに拡大し、地方自治体の中には職員に賃金が払えなくなるなど、公共サービスが一時的に停止になる事態がやってくる。政府の補助金に頼る年金給付や健康保険、介護保険、雇用保険といった社会福祉事業や公共サービスが危機を迎える。年金だけでは暮らせないレベルまでインフレが進み、生活が困窮する事態が起こる。

●金利が急激に上昇していく
 円安を止めるため金利を上昇させることになるため、住宅ローンなど融資を受けている人や企業が危機に直面する。住宅ローンは一気には上がらないものの、利息だけを返し続ける羽目になる場合もある。不動産市場や株式市場は低迷する。

●企業の業績が急激に悪化する
 海外での収益が円安で急増する反面、日本国内での業績は急激に悪化する。これまで企業がため込んできた内部留保も、円だけで運用してきた企業は資産が半減することになる。銀行は、円預金を引き出して外貨に換えようとする客で混乱し、最悪取り付け騒ぎに発展する可能性もある。経営基盤の弱い銀行の破綻も相次ぐ可能性がある。

日本がトルコやアルゼンチンのような状況に陥る可能性は低いが、日本には食糧やエネルギーを自給できていないというリスクが存在する。円安による食糧不足や原油価格高騰といった事態になれば、国民は困窮する。海外の投資家も、日本から資金を引き上げるために、円を売って外貨を買うことになる。超円安のシナリオも完全無視するわけにはいかないだろう。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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