生成AIは「カスタマージャーニー」をこう変える HubSpotが解説する、ビジネス変革の中身

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生成AIが驚くべき進化を遂げ、仕事の効率化や生産性の向上が見込まれている。ビジネス成功のカギを握る「企業と顧客のつながり」の創出と強化にも期待が寄せられている。生成AIの台頭で、これからのカスタマージャーニーやマーケティングはどう変化するのか。顧客関係管理(CRM)プラットフォームを提供するHubSpotが解説する。

生成AIが実現する「企業と顧客のつながり」とは何か

昨今、顧客の情報収集や購買のプロセスが目まぐるしく変化している。その中でますます重要性を増しているのが、企業と顧客との「つながり」だ。

ビジネスにおける「つながり」とは何を指すのか、HubSpot Japan(以下、HubSpot)のマーケティングチームマネージャー・土井早春氏は、3段階に分けて説明する。

「1段階目は、企業(売り手)と顧客(買い手)の双方が相手の存在を把握している状態。例えば『会社名だけ知っている』段階です。2段階目は、企業と顧客の双方が互いのニーズを満たすために取引をしている状態。一般的には、この状態でビジネスは成り立ちます。3段階目は、顧客が企業に対して応援や共感の気持ちを持って購入している状態。例えば『この企業の製品を周囲に勧めたい!』と思うような、一歩踏み込んだつながりです。どのような企業も、ビジネスを持続的に成長させるには3段階目の『つながり』をつくり、深める必要があります」(土井氏)

企業は顧客の自己実現や成長を願い、顧客は企業の理念やポリシーに深く共感している状態。この双方向のエンゲージメントが、競争優位性の底上げに直結するというわけだ。

一方、多くの企業を悩ませているのは、「どのようなアクションがビジネスを持続的に成長させる『つながり』の創出に有効なのか」という点だ。その解を求めて、試行錯誤している企業は少なくないだろう。

その試行錯誤を実りのあるものにする一手が、生成AIだ。生成AIは人間がインプットした情報から学び、さらにインターネット上で必要な情報を収集して、アウトプットする。人間がインプットした情報だけを処理してアウトプットを出していた従来の予測AIとは、一線を画す。

ビジネスの効率性や生産性を大きく変えようとしている生成AIは、「つながり」の創出にも大きく貢献するという。それはなぜか。

HubSpot Japan マーケティングチームマネージャー 土井 早春氏
HubSpot Japan マーケティングチームマネージャー
土井 早春

「生成AIは、高度な自然言語処理やコンテンツ生成ができるので、例えばダイレクトメールの作成などに活用できます。しかし、生成AIの使い方によっては質の低いダイレクトメールも増えかねず、それは双方向のエンゲージメントを高める発想と逆行してしまいます。その中で自社を差異化するためには、生成AIを活用して顧客理解を深め、そのうえで顧客との効果的なコミュニケーションを図ることが必要です」(土井氏)

カスタマージャーニーの変化が「つながり」に影響

では、生成AIをどのように活用し、顧客とのコミュニケーションに役立てればいいのか。土井氏は「まず前提として、ビジネスの変化はいつでも顧客から始まります。企業は自社の顧客を中心に、すべてを始めることがポイント。顧客を知るためのカスタマージャーニーには『認知、検討、購入、使用』の4ステージがあり、それぞれに変化が起きています」と指摘する。

カスタマージャーニーの4段階
カスタマージャーニーの4段階それぞれにおいて、顧客の行動や必要な要素が変化している

まず、「認知」について。顧客が企業や商品を見つける手段は、インターネット検索からSNSに変化している。この変化は、IT関連のビジネスにおける型を大きく揺るがしつつある。

次に「検討」は、「顧客の努力」から「企業と顧客の対話」へと変化している。これまで検討段階の顧客はまず企業のWebサイトを訪問(クリック)し、LP(ランディングページ)を読んでその内容をそしゃくしていた。しかしこれからは、Webサイトで生成AIを実装したチャットと対話しながら、購入を検討するようになるだろう。これまでの「いかにクリックさせるか」という企業目線の考え方からの変革が求められるのである。

そして「購入」については、テンプレートどおりの「パーソナライズ」から、顧客の一人ひとりに合わせてカスタムされたオーダーメイド、「パーソナル」へと変化している。例えば、10年前なら「○○様、お世話になっております」と名前の部分だけカスタムされているダイレクトメールに心を動かされたかもしれないが、今やスパムメールではないかと疑う人が多いだろう。購入のプロセスでは、相手の特性や個性を捉え、その人のためだけに作られたコンテンツやアクションが重要になる。

最後の「使用」は、「受け身」から「能動」へ変化している。カスタマーサポートに問い合わせをしたものの、たらい回しにされた揚げ句に明確な回答を得られない。そんな経験を持つ人は多いだろう。一度の購入で終わらず継続して使い続けてもらうには、カスタマーサポートやLPの不親切さを取り除き、能動的に顧客の困り事を解消する上質なカスタマーサポート体験が不可欠だ。

「INBOUND 2023」

HubSpotが米国のボストンで、2023年9月に4日間にわたり開催した年次イベント。マーケティング、セールス、カスタマーサクセス、コミュニティー、生成AIなどの最新テクノロジーに関わるビジネスリーダーが集い、ビジネスを「Grow Better」に導くための思想やトレンドを発信し、意見を交わす。今回は100カ国以上からオンライン、オフライン合計で約11万人が参加し、グローバル企業ならではの大規模な開催となった。中でも、HubSpotのCEO、ヤミニ・ランガン氏による基調講演では、「企業と顧客のつながり」を生成AIの力で創出する重要性について語られた。

HubSpotが開催した年次イベント「INBOUND 2023」の会場

勝ちパターンの模索に役立つ、4つの生成AI活用法

こうしたカスタマージャーニーの変化について、土井氏はこう考察する。

「人間が介在する方向へ、揺り戻しが起きています。『大量の情報がすぐに手に入る』というインターネットの強みを超え、今は『誰かの見解を聞きたい。作り手の顔を見たい』という方向に変化しているのでしょう。ただ、顧客の変化をつかめても、それを基に最適なカスタマージャーニーを描くのは困難です。そこで鍵になるのが、生成AIです」

生成AIを、顧客とのつながりの創出にどう活用できるのか。何から始めればいいのかわからないという企業も多いのではないだろうか。まず着手するべき具体的な方法として「botの活用」「コンテンツの更新」「営業成績の予測」「事前対応型のカスタマーサービス」の4つが挙げられる。

4つの生成AI活用法
生成AIを、顧客とのつながりの創出に活用するためまず検討したい4つの具体例

「botの活用」は、顧客が検討時に必要とする情報を提供するチャットbotや、顧客サポートを行うサポートbotなどの活用だ。生成AIを搭載したbotなら、顧客の課題解決をスムーズにし、ひいては満足度向上も期待できる。

「コンテンツの更新」は、生成AIでWebサイト、ブログ、動画などのコンテンツを最適化できる。人間の発想や感覚を生かしながらも、生成AIで顧客のニーズをくんだコンテンツにすることで、より強く興味喚起できるようになるだろう。

「営業成績の予測」は、生成AIが過去の取引のデータを基に売り上げを予測するものだ。その作業が人間の手から離れれば、営業部員は顧客とのつながりを強化する活動に集中でき、効果的かつ的確な営業活動、ひいては受注増につながる。

「事前対応型のカスタマーサービス」は、顧客の負担を生成AIで改善する方法だ。顧客からの問い合わせを待つのではなく、顧客が知りたいであろう事柄や、知っていると疑問解消につながるポイントを通知するなど、能動的にサポートすることが重要だ。

これらの活用法は、既存のマーケティング手法をより深化させる。生成AIを通して顧客の変化に迅速に対応し、顧客にメリットを与えられることは間違いないだろう。

その手段として、HubSpotは生成AI搭載のプラットフォーム「HubSpot AI」を提供している。生成AIの実装でマーケティングや営業、カスタマーサービスなど各部門のパフォーマンスを向上させ、顧客に行き届いたケアを提供することで、顧客とのつながりをもう一段階深めていく狙いだ。こうしたツールを通して、つながりの創出に向けた策を展開していくことが、今の時代のビジネスリーダーに求められている。

>【INBOUND 2023】基調講演(日本語字幕付き)はこちら

>生成AIを搭載した新機能群「HubSpot AI」について詳しくはこちら

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