この1年で好感度急上昇「リモート営業」の本質

営業の成否は、訪問するかどうかでは決まらない

ほんの1年半前まで、日本における「営業」といえば「顧客を訪問し、直接会って商談すること」が主流だった。しかしコロナ禍を経て、リモート営業が急速に普及。従来の常識が通用しない場面も多々表れ始めた。今、営業の最前線で定着しつつある新常識とは何か。データを基に探ってみよう。

「リモート営業」のほうがリアルよりむしろ好まれ始めている

コロナ禍で訪問が難しくなった今、顧客は不満を抱えているに違いない―。もしそう考える営業担当者がいたら、一度自分の考えを疑ったほうがいい。最新データは、むしろ逆の傾向を示しているからだ。

HubSpot Japanは2021年2月に「第2回日本の営業に関する意識・実態調査」を発表した。この調査は、経営層やBtoBビジネスの営業担当者に加え、顧客側も調査対象にしている点が特徴。営業担当者はつい競合他社の動向にばかり注目しがちだが、本来は顧客側の意識にこそ焦点を合わせるべきであり、それができて初めて質の高い顧客体験を提供し、自社の競争優位を築くことができるという考えに基づくものだ。

顧客側の「2020年12月時点での気持ち」では、訪問営業よりリモート営業に好感が寄せられている。「19年12月時点での気持ち」とは、がらりと変化している

では顧客の意識は、具体的にどう変化したのか。今回の調査では、顧客にとっての「好ましい営業スタイル」についての質問で、顧客側に対し「2019年12月時点での意識」と「2020年12月時点での意識」を聞いた。19年12月時点での気持ちとして「訪問型営業が好ましい」と回答した人は53.7%、「リモート営業が好ましい」と回答した人は21.0%だったが、2020年12月時点では、「訪問型営業が好ましい」は35.0%へと大きく低下。それに対して「リモート営業が好ましい」は38.5%に伸びた。

HubSpot Japan
共同事業責任者
シニアマーケティングディレクター
伊佐 裕也

訪問型営業よりも、リモート営業のほうが好まれる時代になったようだ。ここ1年で起きたこの逆転現象について、HubSpot Japanの伊佐裕也氏は次のように分析する。

「『対面だとウイルス感染のリスクが高まる』『テレワークをしているので、訪問されても対応できない』といった理由が考えられます。ただ、こうした消極的な理由だけでなく、リモート営業ならではのメリットに気づいた人も多かった。例えば『スケジューリングしやすい』『会議室予約などの作業が不要』と感じた顧客は、今後もリモート営業を好むでしょう」

営業担当者は、顧客の意識の変化に追いつけるか?

興味深いのは、こうした顧客の意識の変化と、営業する側の意識の変化が必ずしも一致していないことだ。上記と同じ質問を営業担当者にしたところ、「訪問型営業が好ましい」と答えた人が48.0%と、「リモート営業が好ましい」の21.8%と比べ圧倒的に多かった。

「このギャップの背景にあるのは、『誠意』の捉え方です。データを見ると、顧客側は誠意の表れとして、営業する側が思っているほど直接の訪問を重視していません」と伊佐氏は解説する。

「訪問型営業が好ましい」と回答した営業側に、その理由を尋ねたところ「訪問しないと誠意を見せられないと思うから」が36.1%で、「訪問型営業の方が成約率が高いと思うから」(45%)に続き2位となっている。一方、顧客側が考える「誠意ある営業担当者」で「足を運び、対面で話してくれる」は23.9%。全体で10番目という結果になった。

顧客にとって「対面営業かどうか」は重視されていない。その重要度は「時間通りに商談が終わる」「他社サービスの悪口を言わない」をも下回っている

では、買い手は営業担当者のどこに誠意を感じるのか。上位を占めたのは、「できないことを明確に伝えてくれる」(47.9%)、「短時間で内容の濃い商談をしてくれる」(41.4%)だった。

「顧客は商談の方法やその中身、対応の速さなどを総合的に評価します。顧客のスムーズな意思決定を助けるために工夫を凝らすことで、誠意が顧客に伝わり、信頼関係が構築されていく。『オンライン=〇、オフライン=×』という図式ではなく、あくまでも業種や商材に応じて購買体験全体の質を高めることが大切だということです」(伊佐氏)

実際、リモート営業導入企業と非導入企業の成約率を見ると、両者に大きな差は見られなかった(前者は42.2%、後者は39.1%)。直接訪問したからといって、一律に成約率が高まるわけではないのは明らかだ。

「リモートor訪問」どちらがいいか?と、問題を矮小化してはいけない

では結局、何が営業の成否を分けるのか。

「営業の結果を左右するのは、顧客の課題を理解し、それを解決する提案や情報を適切なタイミングで提供できるかどうか。この本質はリモート営業でも訪問型営業でも同じで、どちらが優れているのかという話に矮小化してはいけません。それぞれのよさを組み合わせて、本質的なアプローチ方法を考えるべきです」と伊佐氏は語る。

例えば訪問型営業には「商品サンプルを実際に触ってもらえる」「複数関係者で議論しやすい」、リモート型営業には「浮いた移動時間を商談の準備に充て、提案内容を深められる」などの利点がある。これらをハイブリッド型で組み合わせたら、より顧客に響く提案ができるだろう。ここで1つ、興味深いエピソードがある。米国に本社を持つHubSpotでは日本法人設立当初、日本の顧客がビデオ会議の際にカメラオンで参加する率が高いことに、アメリカ人マネジャーが驚いたという。

「アメリカは国土が広いため、以前から電話営業が普及していたというのはよく知られている話ですが、ビデオ営業が普及した現在でもカメラオフにするのが一般的だそうです。しかし訪問型営業がベースにある日本では、カメラオンが好まれる。こういった細かな点も含め、顧客が望むことは地域性や業種、時代状況によって変化します。普遍的な方法論を追求するよりも、自社に合ったやり方を試し続けることが大切です」(伊佐氏)

「年間約6650億円」の衝撃 日本の法人営業に潜むムダ

今回の調査で、注目したい結果がもう1つある。営業担当者に「働く時間のうちムダだと感じる時間の割合」を質問したところ、回答者全員の加重平均で「働く時間の約20%」がムダと考えられていることがわかったのだ。人件費に換算すると、日本全体で約6650億円。経営者にとっては、直視したくない現実だ。

具体的に営業担当者がムダを感じているのは、「社内会議」(50.3%)、「社内報告業務」(39.3%)と、社内の情報共有に関するものが上位に入った。伊佐氏の分析はこうだ。

「これらは手間や時間がかかる割に、成果が出ていないからでしょう。背景には顧客情報が一元管理されていないことがあります。今回の調査では、回答したうちの3社に1社が、自社の顧客管理の方法が『明確ではない・わからない』と回答しました。営業活動の要である顧客情報が社内に散らばっているので、情報共有のたびに混乱が起きて、余計な手間や時間がかかってしまうんです」

社内で十分な情報共有をしないまま顧客にアプローチする、いわゆる“やみくも営業”になれば、もちろん結果はついてこない。営業担当者がムダと感じるのも当然だ。

かつてのように人材の流動性が低く、既存顧客からの売り上げが事業成長の大部分を保証している状況では、属人的な管理方法が機能するかもしれない。しかし近年は、営業とは別のマーケティング専任部門が新規見込み客との接点創出を担ったり、製品の販売~サポートにおいて各部門の分業化が進んだりといった変化も著しい。にもかかわらず顧客情報管理が個人に任されたままであれば、情報共有ができず、やみくも営業が生まれてしまう。

「調査で『オンライン商談では、営業の「勘」を働かせづらい』という、悲痛な現場の声も聞かれました。この状況から脱するためには、顧客情報管理の基盤を作って、誰でも同じ情報を見られる環境を整えることが重要です。さらに次の段階として、営業担当者の知見を営業プロセスに組み込んでみましょう。『決裁担当者が口頭でGOサインを出したら、商談の受注見込みは何%』というように案件進捗管理のステージ設計ができれば、営業担当者の感覚を仕組みで補うことができます」

ムダを放置して、リソースを分散させ続けるのか。それとも顧客情報や営業担当者の知見を共有して、優れた顧客体験につながる営業を効率よく展開していくのか。データを直視し、改めて考えることが必要だ。

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