盛山正仁文部科学大臣は2023年9月19日の記者会見で、24(令和6)年度予算の概算要求で「教員になったら奨学金を減免する」という制度の復活方針が盛り込まれていることについて、「質の高い教師の確保に資するものとなるよう検討を進めている」と述べた。

続いて22日の記者会見では、私立大学の定員割れが5割を超えたことを受け、大学側に改革を求めた。

1998年に教員の奨学金減免は廃止されていた

奨学金事業を運営する日本学生支援機構(JASSO)の前身である日本育英会は、奨学金を借りた人が教員職などに一定期間ついた場合、返済を減免していた。しかし、公平性などを理由に教員については1998年4月入学者から廃止した。

文部科学省は2024(令和6)年度予算概算要求で「教師人材の確保強化」として新規に22億円を要望。この中で「教師⼈材確保⽅策として、奨学⾦の返還⽀援も検討」と明記している。かつてのように日本学生支援機構の貸与型奨学金を利用した学生らが教員になった場合、返還を減免する方向で検討し、教員のなり手不足解消につなげたい考えだ。

9月19日の会見で盛山正仁大臣は、現在の教員不足の状況について「(新規採用された若い教員の)産休・育休の増加などで臨時講師の需要が増加しているが、採用数の拡大で既卒受験者の多くが正規教員として採用されたため、臨時講師のなり手が減少しているという構造的な要因」との認識を示した。

そのうえで、「教師の奨学金の返還の支援については過去に返還免除が廃止された経緯あるいは大学進学率の上昇などの状況、現在の教師不足に対する効果も考慮し、質の高い教師の確保に資するものとなるよう現在検討を進めている」と述べた。

私大の定員割れ5割超えで大臣も地方での教育機会喪失に危機感

また、22日の会見では盛山大臣は2023年春の入学者が定員割れした4年制の私立大は53.3%に当たる320校で、1999年度の調査開始以来、初めて5割を超えたという日本私立学校振興・共済事業団の調査に言及した。

同調査では、18歳人口の減少などの影響を受け、2022年度(47.3%)より6.0ポイント(37校)減少した。私立短大の定員割れも92.0%と過去最高になったことも明らかになっている。

盛山大臣は「(地方の大学が消滅することによって)地方の若者の教育機会が失われることのないよう、各大学が時代の変化や社会のニーズに対応し教育研究の質を高めつつ、自ら経営力の強化、改革に取り組むことが重要」と話し、24(令和6)年度予算の概算要求で、経営改革を行ったり、連携・統合を希望したりしている私立大学を支援するために必要な経費を計上していることを強調した。

一方、「地方の大学の経営環境が厳しくなり、学生が減る問題は文科省としても取り組まないといけないが、地域の人口減少は学校側だけの努力だけでは何ともならないと思う。もっと大きな枠組みの中での地域を支えることも含めて考えていかないといけない」とも述べた。

盛山大臣は9月25日、中央教育審議会の総会を開き、18歳人口の急速な減少を見据え、大学の適正規模を見直すために大学の再編や統合についてや「設置者の枠を超えた、高等教育機関間の連携・再編・統合の議論は避けることができない」として、国公私立の枠を超えた大学再編について諮問。具体的な検討に入るよう求めた。

調査元:

https://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/mext_00413.html

https://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/mext_00414.html