大躍進を果たした井伊直政にとって、出世のきっかけとなった「天正壬午の乱」。この騒乱後に、800人以上の武田旧臣が、徳川方に帰属することとなった。
武田の軍法も井伊隊に引き継がせた
そうして武田旧臣を取り込みながら、家康は武田の軍法を井伊の部隊に継承させている。武田の「赤備え」まで引き継がせて、井伊隊は旗指物、鞍や鎧、馬の鞭などもすべて赤で統一されることとなった。
かつての敵をわだかまりなく、味方に迎えて戦力にする――。
そんな家康の柔軟性には驚かされるばかりだ。抜擢された直政もまた、家康のそんな姿に「人を活かす」理想のリーダー像を見たのではないだろうか。
【参考文献】
大久保彦左衛門、小林賢章訳『現代語訳 三河物語』(ちくま学芸文庫)
大石学、小宮山敏和、野口朋隆、佐藤宏之編『家康公伝〈1〉~〈5〉現代語訳徳川実紀』(吉川弘文館)
宇野鎭夫訳『松平氏由緒書 : 松平太郎左衛門家口伝』(松平親氏公顕彰会)
平野明夫『三河 松平一族』(新人物往来社)
所理喜夫『徳川将軍権力の構造』(吉川弘文館)
本多隆成『定本 徳川家康』(吉川弘文館)
笠谷和比古『徳川家康 われ一人腹を切て、万民を助くべし』 (ミネルヴァ書房)
平山優『新説 家康と三方原合戦』 (NHK出版新書)
河合敦『徳川家康と9つの危機』 (PHP新書)
二木謙一『徳川家康』(ちくま新書)
日本史史料研究会監修、平野明夫編『家康研究の最前線』(歴史新書y)
菊地浩之『徳川家臣団の謎』(角川選書)
太田牛一、中川太古訳『現代語訳 信長公記』(新人物文庫)
野田浩子『井伊家 彦根藩』(吉川弘文館)
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