企業の子育て参画を模索しようと2023年7月25日、特定非営利活動法人「放課後NPOアフタースクール」(平岩国泰代表理事、東京都文京区)は、フォーラム「最新事例から読み解く“こどもまんなか社会”実現に向けて企業はなにができるか?」を都内で開き(東洋経済新報社後援)、教育関係者らが企業の最新の取り組みを学んだ。
放課後NPOアフタースクールが子どもの居場所づくりを呼びかけ
放課後NPOアフタースクールは子どもたちの“ゴールデンタイム”である放課後の居場所について「居たい」「行きたい」「やってみたい」の3点からのアプローチに取り組んでいる。このうち、いろんな人と出会ったり、好きなことができたり、学びをサポートしてくれる人がいたりなどの「やってみたい」について、企業に一緒に考えるよう呼びかけている。
フォーラムには、こうした事業に取り組む先進企業として、丸井グループ、ソニーグループ、カゴメの担当者が登壇した。
「将来世代」もステークホルダー
丸井グループの担当者は「『将来世代』をステークホルダーとして明示しているのは当社だけ」とし、ステークホルダーと「将来世代の未来を共に創る」などを目標に、社会課題解決企業への進化を目指していることを説明。
同社は現在、家事や仕事との両立が難しく時間が取れない保護者に代わって、読み聞かせを代行するサービス「YOMY!」との協業(3~8歳を対象に7月31日まで体験会を受付中)などを行っていることを紹介した。
担当者は「こうした場を企業が応援することで、子どもたちが成長することになれば」と話した。
教育格差をコレクティブインパクトで解消
次に、ソニーグループの担当者が登場。ソニーは子どもの教育支援事業として、創業時から理科教育を行っていた。現在は「For the Next Generation」をスローガンに、子どもたちの好奇心を育む教育プログラムを国内外で展開している。
具体的には、子どもの教育格差を解消するため、ソニーグループの技術・コンテンツを活用して地方や離島の子どもたちにプログラミングやアニメ制作などのワークショップを提供したり、外部団体と協業し経済的困難な子どもを含む地域の人々が集う子ども食堂を運営したりしているという。
担当者は「教育格差縮小という大きな課題解決に向けてはソニー1社では難しい。企業や自治体、教育機関などのプレイヤーを巻き込んで効果を最大化させるコレクティブインパクトという考えが必要で、そのモデルを構築、普及させ、格差解消へ前進させたい」と話した。
野菜を通じて環境や命の大切さも育む
最後にカゴメの担当者が登壇。カゴメでは日本人に不足している野菜の摂取量を増やそうと、ミュージカルの「カゴメ劇場」(2213公演、のべ364万人を招待)を開催したり、野菜の栽培から収穫、調理までの体験を提供したりして食育に取り組んでいる。
特に放課後NPOアフタースクールとの協業「おいしい!野菜チャレンジ」はクイズや実験、ジュース作りなどを通して楽しみながら野菜と仲良くなり、食習慣を見直すプログラムで、子どもにも保護者にも高く評価されているという。
担当者は「野菜を好きになれば摂取量も増えて健康寿命にもつながるし、環境や命の大切さも考えることになる」と話した。
子どもの問題だけは企業が業種を超えて手を組む社会に
トークセッションでは、平岩理事が「少子化は“静かなる災害”ともいわれ、企業共通の社会課題。子どもの問題だけは、業種を超えて、普段はライバル関係にある企業とも手を組むような社会になったらいいと思う。子どもたちのために小さなことでもいいので何かやっているという社会をデザインしたい」とまとめた。
放課後NPOアフタースクールでは、子どもの放課後の活動を支援したり、居場所運営者が学びあう場を支援したりする企業を募集しているという。
(撮影:尾形文繁)