松丸亮吾×脳医学者「謎解きと自然体験の共通点」 「好き」が起点の熱中が子の自己肯定感を高める

「考える=楽しい」が、人生を豊かにする
――お2人は、それぞれ謎解きクリエイター、医師・経営者としてご活躍されていますが、幼少期の「自己肯定感」を振り返って、いかがですか?
松丸 亮吾(以下、松丸):僕は「勉強が好きそう」というイメージをよく持たれるのですが、小学生の頃は成績もふるわず、勉強好きではありませんでした。4兄弟の末っ子でしたが、兄たちは成績優秀で、ゲームをしても勝てない。ずっと、「負けてて悔しい」という気持ちがありました。自己肯定感はかなり低かったと思います。

松丸亮吾氏
東大発の謎解きクリエイター集団RIDDLERの代表取締役。〝謎解き〞ブームの仕掛け人。2023年3月には、小学生のためのひらめき学習塾「リドラボ」を開校し、子どもたちが楽しみながらこれからの時代に必要な「地頭力」を育てることに注力している
瀧 靖之(以下、瀧):松丸さんは麻布から東大に行かれて、超エリートのイメージがありますから、子どもの頃に自己肯定感が低かったのはとても意外です。私はというと、どちらかと言えば自己肯定感が常に高い方でした(笑)。幼少期は蝶採りが大好きで、採集や調査に没頭していたのですが、そのおかげで友達よりも蝶に詳しくなっていたことが関係しているのかもしれません。松丸さんは、その後自己肯定感が低い状態から脱したきっかけがあったのでしょうか?

瀧靖之氏
松丸:小学3年生の時でしたが、家族で謎解きのテレビ番組を見ていて、「IQ120相当・東大生レベル」と出てきた問題をいちばん初めに解けたのが僕だったんです。偶然の出来事ではありましたが、その1回の勝利が僕の中ではすごく大きなブレークスルーになって。頭を捻ったり思考することに関しては得意なのかもしれない、考えるって楽しいことなんだ、と錯覚できたんです。そこから謎解きや勉強に熱中するようになりました。
瀧:自己肯定感は「自分自身が頑張ることで何かを変えられるかもしれない」という感覚です。先ほど松丸さんは「錯覚した」とおっしゃっていましたが、まさにそれは、「できるかもしれない」と自分を信じてあげられた、自己肯定感が高まったということ。この原体験があると、芸術でも勉強でもスポーツでも、いろんなことに興味関心が持てるようになります。
子どもに「勉強しなさい」と言う前にやるべきことは?
――松丸さんは謎解きで自信がついて、勉強にも熱中するようになったんですね。
松丸:いきなり勉強もするようになった!ということではありません。実は僕はゲームばかりで勉強しない典型的な子どもだったんです。ゲームを没収されたら、暴れ出したりして(笑)そこで僕の母親は、「ゲームは無制限でやっていい、でも先に勉強を2時間する」というルールを作りました。そこからは朝早起きして1時間、学校から帰ってきて1時間、ゲームのために勉強をするようになりました。気がついたら勉強もある程度できるようになってきて、だんだんと楽しくなり、小学4・5年生あたりから一気に成績が伸びていきました。
瀧:最初はゲームができるという外発的な動機づけ、そこから徐々に、楽しいからやるという、内発的な動機づけに変わっていったのですね。私も幼少期はゲームが好きだったので、当時母親は苦労したと思います。これは後から知ったことですが、あまりにも私が熱中しているから、「何がそんなに面白いのか」と思って、母親もこっそりゲームをやっていたみたいなんです(笑)。

――子どもが熱中していることに興味を持って自分もやってみる、ということは大事ですよね。
瀧:子どもは「親が自分を理解しようとしてくれているか」ということを敏感に感じとります。一方的に「勉強しなさい」では、なかなか上手くいきません。私自身は最近、仕事が休みの日に、息子と一緒に勉強するようにしています。受験期ということもあり、がちんこで6時間くらい「この問題、解けないなあ」と一緒に頭を捻って。僕は北海道の片田舎出身ですが、中学受験の勉強はまた一味違って本当に知的好奇心が刺激されます(笑)
松丸:瀧先生のお子さんへの関わり方は本当に理想ですね。僕も子どもができたら、子どもと一緒に勉強に取り組みたいです。親が「やりなさい」と口で言うだけだと、子どもは納得感を持って取り組めないんですよね。全く同じことでなくても、例えば「私は今から仕事をするから、〇〇は勉強やらない?」とか。子どもは親が頑張るなら自分も頑張ろうと思えます。
――そのほかにも、子どもの「熱中体験」のために、親が心得るべきことは何だとお考えでしょうか?
松丸:「何に役立つかを考えない」ことも、すごく大事だと思っています。例えば、最近はプログラミング教育に注目が集まっていますが、「将来役立つと言われているから」「みんな始めているから」といった理由で子どもに強制するのはお勧めしません。プログラミングは素晴らしい学びがあるものでそれ自体を否定はしませんが、「将来役立つかどうか」が「子どもの興味関心」よりも先に来てしまうのは良くない。
僕は、同じ時間をかけていても、好きなことをやっていると2倍3倍のスピードで成長できると思っていて。その結果、人よりも圧倒的に「変態的」に何かを知っていたり熱中している子こそ、将来活躍する人になれるのではないでしょうか。

瀧:「変態的」に何かに没頭することの大切さ、本当にわかります。僕にとっての蝶採りがそうであったように、「これだけは誰にも負けない」ものがあると、それ自体が生きていく原動力になるんですよね。
自己肯定感を育んだ、自然と謎解きの共通点
――瀧先生は蝶採り、松丸さんは謎解きに熱中したことで、自己肯定感が育まれたということですね。
瀧:幼少期、めったに採れない蝶を採るために、遠いところまで自転車で何往復もして、やっと採れた時のことは今でも覚えています。自然は常に状態が変わっていく、予定調和でないフィールドです。蝶採り以外に、例えば釣りや登山でも、天気や季節や風向きなど、思い通りにいかないことを加味しながら、何とか達成しようと努力して成功できた時の喜びは大きく、そうした要素が自己肯定感につながると考えています。
松丸:予定調和でないというのは、決まった解法が存在しない謎解きにも共通しています。子どもたちは解き方を教えられていないので、「カタカナに変えて見たらどうだろう」「これって何かの頭文字?」など、自分なりに試行錯誤するんですね。誰からも教えられずに、自分の力で答えまで辿り着いた時の達成感。それが自己肯定感の正体ではないでしょうか。
自然の中にも、解法のない問題がたくさん転がっていますよね。ゲームのように攻略したり、全クリアーみたいなことが起こらない。
瀧:松丸さん、よくわかっていらっしゃる!自然は、好奇心が無限に広がっていく場所です。現地はもちろん、行く前にあらゆる想像を膨らませて一緒に準備するのも、子どもの脳のさまざまな領域を刺激します。親にもわからないことはたくさんあると思いますが、子どもと新しいことを知るプロセスをぜひ楽しんでほしいですね。

グローブライドは、世界有数のフィッシング総合ブランド「DAIWA」で知られるスポーツ関連企業だ。このフィッシングを主力事業に、ゴルフやラケットスポーツ、サイクルスポーツの4事業を手がけている。またグローバル企業として、国内および海外(中国、タイ、ベトナム、英国)に生産拠点を有し、米州、欧州、アジア・オセアニアを含む世界4極で主力事業を展開している。

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環境活動にも積極的に取り組んでおり、CO2を吸収する森林保全や環境配慮型製品の開発なども推進している。
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