わが子の「得意」が見つかる「余白の時間」とは 成長の大原則は「好きなもので褒められる」

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(左)東北大学加齢医学研究所 副センター長 瀧 靖之氏
(右)放課後NPOアフタースクール代表理事 平岩 国泰氏
幼少期の親との関わり合いや体験は、自己肯定感の育成に大きく影響するといわれている。親はわが子にどう接し、何を体験させることが望ましいのだろうか。脳医学者の瀧靖之教授と、社会を巻き込んだ教育改革を目指す「放課後NPOアフタースクール」代表理事で、書籍『「自己肯定感」育成入門』の著者である平岩国泰氏が、脳医学と教育双方の見地から語った。

子どもは「余白の時間」で成長する

――子どもにとって、放課後はどのような時間なのでしょうか。

平岩国泰(以下、平岩):放課後は子どもたちの「余白の時間」だと考えています。昔と比べて、今の子どもたちは学校以外にも、塾や習い事などやることがたくさんあります。それによって、ボーッとしたり、好きなことをしたりする時間が減っていると思うんです。余白の少ない日常は、子どもたちの心に知らず知らずのうちにストレスとプレッシャーを与えかねません。子どもには、自由に過ごせる時間が大切だと思っています。

放課後NPOアフタースクール 代表理事
新渡戸文化学園 理事長
平岩 国泰氏

瀧靖之(以下、瀧):おっしゃるとおりだと思います。放課後NPOアフタースクール(以下、アフタースクール)では、子どもたちの自主性に応じて、好きなことができるようにプログラムを組まれていますよね。

平岩:はい。地域でさまざまな特技やキャリアを持つ大人を発掘し、「市民先生」として来ていただいています。例えば、大学生とサッカーをしたり、本物のシェフと料理をしたり、建築士と本物の木の家を造ったりと、子どもたちがやりたいことを中心に毎日各学校でたくさんのプログラムを実施しており、年間でのべ20万人ほどが参加しています。子どもたちの放課後を、地域社会でつくりあげているのです。

:子どもたちが「世代を超えたリアルなコミュニケーション」を経験できるのは大きなポイントですね。これは子どもの脳機能の「共感性」、つまり思いやりや感情の推し量り方を育みます。バーチャルでは表情や会話の温度感がわかりにくいので、共感性を育むのはなかなか難しいんです。実際に、若年層のコミュニケーションスキルの低下が、SNSの普及と比例するように問題視されています。

東北大学加齢医学研究所 教授
株式会社CogSmart 代表取締役
瀧 靖之氏

平岩:私の実感でも、アフタースクールの子どもたちはコミュニケーションスキルが向上しているように見えます。とくに、学年を超えた交流で著しく成長するんです。人との交流が苦手だった子に後輩ができて、面倒を見ようと頑張っている姿を見ると感動します。アフタースクールは、今の子どもたちに足りないとされる「3つの間」つまり「時間・空間・仲間」を提供できる場だと思っています。

「気づいて認めること」で自己肯定感を高める

――地域の大人が子どもの放課後に介在する意義を教えてください。

平岩:子どもの個性や長所には、親や先生だけでは見つけてあげられないものもあるんですよね。それに気づけるのが市民先生です。私の大切なエピソードがあります。小学4年生の男の子で、勉強や運動が苦手でいつも自信なさげな子がいたんです。彼が料理プログラムに参加したとき、和食料理人の市民先生が彼にふと「今日から君は私の一番弟子だ」と言ったんですね。その一言から彼は料理に夢中になり、どんどん生き生きし始めたんです。ある日その市民先生に「俺はきみがいないと困るんだよ」と言われた時はとてもうれしそうな顔をしていましたね。家でも料理をして親からも褒められるようになったことで、彼は本当に変わりました。

:とても興味深い話ですね。人間は、オンリーワンな存在と認められると幸福感が高まり、得意なことを褒められると自己肯定感が高まります。これらは、行動変容を引き起こす強い原動力です。市民先生は、普段接していないからこそ一人ひとりを先入観なしに見ることができるため、個々人のオンリーワンに気づきやすいのかもしれません。

平岩:私は、子どもの自己肯定感を育むには「心の安全基地」「コーチ目線」「社会」の3本柱が必須だと考えています。「心の安全基地」には、ほかの子と比べずにその子自身の成長を見つめてくれる大人が必要です。「コーチ目線」とは、ぐいぐい引っ張るのではなく斜め後ろから見守って本人の決断を尊重する姿勢です。最後の「社会」は、いろいろな人の目線で、その子のよさを引き出して育てる環境です。

:その3本柱はとても大切ですね。とりわけ大事だと感じたのは「心の安全基地」をつくることです。愛着形成は脳の発達の土台になります。この土台があってこそ、子どもは冒険する勇気を持てます。冒険では成功も失敗もしますが、成功したら褒めてもらい、失敗しても受け止めてもらえる経験の積み重ねが大事です。

――「自分がわが子の自己肯定感を下げているのでは」と不安に思う親御さんもいるかもしれません。どのようなことに気をつければいいでしょうか。

平岩:1つは「正解探しをしないこと」です。今の世の中はさまざまな教育メソッドであふれているので、どうしてもベストを知りたいと思ってしまいますよね。でも、その子にとっての絶対的な正解なんてものはありません。それより、愛情をもってありのままに接すればいいと思うんです。ただ、1つだけやってはいけないことがあります。「頭ごなしに否定すること」です。例えば、忘れ物や寝坊をしたときは「そういうこともあるよね。どうしたの?」と声をかけてください。失敗くらい、私たち大人だってしますよね。上から目線で注意すると子どもは心を閉ざしてしまうので、同じ目線で寄り添うことは大切です。

自然体験で、予定調和のない楽しさを知る

――夏休みなど時間にゆとりがある期間は、どのように過ごし方がありますか。

平岩:自然体験や外遊びはとても大事だと思っています。アフタースクールで子どもたちにやりたいことを聞くと、ほとんどの子は外遊びと答えるんですね。自然は教室と異なり、予測できないことがたくさん起きます。VUCA(環境変化が激しく先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態)の時代ともいわれますが、この先子どもたちが出ていく社会は、今以上に予測不可能な点が多いでしょう。だからこそ、今から変化に対する柔軟な姿勢や、困難な状況を切り抜ける力を身に付けることが重要です。自然体験や外遊びは貴重な経験になると思います。

:脳科学の観点から言うと、「今の自分にとって少し難しいこと」にトライすることは育脳に大変効果があります。少し高いハードルを乗り越える経験は自信につながり、不確実なことへの挑戦にも楽しさを感じられるようになります。

平岩:私も、少し高いハードルは必要だと感じます。予定調和がない自然体験は、子どもの成長に寄与する要素が多いですよね。アフタースクールにもキャンプやハイキングのプログラムがありますが、計画は大枠だけ決めて、細かくは詰めません。雨が降るかもしれないし、見たかったものが見られないかもしれない。料理を黒焦げにしてしまうこともあります。でも、予想外の経験は、成長につながるのはもちろんよい思い出になるものです。

:今の子どもたちは、勉強やゲームなど答えがはっきりしていて予定調和的な物事に取り組む機会が多いです。しかしながら、現実世界の出来事や人間関係は、明確な答えがあるものばかりではありません。人生は、答えがないことへの挑戦そのものです。釣りや昆虫採取などの自然体験には、こうした挑戦がつらく苦しいことではなく、むしろ楽しいことだと思わせてくれる力があるのかもしれませんね。

 

グローブライドは、世界有数のフィッシング総合ブランド「DAIWA」で知られるスポーツ関連企業だ。このフィッシングを主力事業に、ゴルフやラケットスポーツ、サイクルスポーツの4事業を手がけている。またグローバル企業として、国内および海外(中国、タイ、ベトナム、英国)に生産拠点を有し、米州、欧州、アジア・オセアニアを含む世界4極で主力事業を展開している。

フィッシングの「DAIWA」とともに広く浸透してきた「ダイワ精工」から創業50周年を機にグローバル企業への成長といった強い意志から、2009年10月に現在の「グローブライド」へと社名を変更した。

withコロナ時代において、中核事業の「フィッシング」は「3密」を避けたアウトドアスポーツ・レジャーとして評価され、「ニューノーマル」が定着する中、その業績も好調だ。

環境活動にも積極的に取り組んでおり、CO2を吸収する森林保全や環境配慮型製品の開発なども推進している。

40年以上続くD.Y.F.C(ダイワヤングフィッシングクラブ)の運営にも力を入れており、未来を担う子どもたちと釣りを楽しみつつ、自然体験を通し「自分で考え、自分で工夫し、自分で動く」学びの場を提供している。

「グローブライド」という社名には、地球を舞台にスポーツの新たな楽しみを創造し、スポーツと自然を愛するすべての人に貢献したいという思いが込められている。

世界中の人々に人生の豊かな時間を提供する「ライフタイム・スポーツ・カンパニー」として、今後も地球を五感で楽しむ歓びを広め、アウトドアスポーツ・レジャーの未来を拓いていくユニークな企業だ。