親の悩み、「SDGs」どうやって子どもに教える? 家族で正解のない問いに向き合う方法と心構え

「SDGs」は、未来を生きる子どもたちに欠かせない重要な共通課題。学校教育でも重要視され始めたが、自身の学校教育の中でSDGsを学んでいない親世代は、家庭内で子どもたちにどうアプローチすべきか。こども国連環境会議推進協会の事務局長でSDGsを題材にしたワークショップを数多く手がける井澤友郭氏と、脳医学者の瀧靖之教授が、教育と脳医学の見地からその方法を導き出す。

SDGs教育は「答えなき問いに挑む」こと

――子どもがSDGsを学ぶきっかけはどうつくればよいでしょうか?

瀧 靖之(以下、瀧):日々の生活で生じる身近な疑問だと思います。SDGsの課題は、明確な答えがなくジレンマが生じるものばかり。例えば、自然や昆虫が好きな私は南米の焼畑農業に心が痛みますが、一方で焼畑をなくせば生計を立てられない人が出てくるのも事実です。こうした矛盾をどう解決すればいいのか。答えのない問題を考え続けることは大人にとっても難しいですが、逃げずに必死に考えることこそが、SDGs教育そのものではないでしょうか。

東北大学加齢医学研究所 副センター長 瀧 靖之氏

井澤 友郭(以下、井澤):おっしゃるとおりです。SDGsは決して海の向こうの話だけではなく、自分たちの身近にあります。秋に子どもと都内の小川にザリガニ釣りに行きましたが、メダカのような小さな魚がたくさん泳いでいました。背びれがキラキラ光るので目を凝らすと、なんとグッピーのような熱帯魚。いま熱帯魚は完全に野生化していて、場所によっては自力で冬を越すこともあるようです。これだって、地球を取り巻く環境問題です。

こども国連環境会議推進協会 事務局長・ワークショップデザイナー 井澤 友郭氏

:目に見える事象の背景を探ってみることですよね。人間にとって、「答えが1つとは限らない問題」を悩む力は大切です。一方で私たちは、「明確な答えがない」という状態に気持ち悪さや不快感を抱きがち。でも、ここで一生懸命向き合うこと自体がSDGsなんです。だから親には、子どもが持った疑問に対して「〇〇だからじゃないの?」と表面的な回答をせず、共に深く向き合ってあげてほしいです。

井澤:「共に」というのがポイントですね。親が正解を与える必要は1ミリもありません。むしろ、大人が正解を与えてしまうと、子どもはつねに正解があると信じて探すようになってしまいます。あくまでも、一緒に考える存在であることが大事です。

「我慢強さ」と「粘り強さ」の違いとは?

――家庭では、どのようにSDGsを扱うといいでしょうか?

井澤:「暗記型の勉強」で終わらせないことですね。日本人はよく「我慢強い」といわれます。これは、揺るぎないルールに自分を従わせる能力です。実際、日本の学校教育では「我慢強さ」を伸ばしてきました。過去の正解をひたすら覚えた子が試験でよい成績を取る、賢い子とされてきました。しかし、SDGsのような答えのない問題では、我慢強さよりも問い続ける「粘り強さ」が求められます。

「我慢強さ」が耐え忍ぶことであるのに対し、「粘り強さ」は自ら行動して目標をつかみ取ることです。例えば釣りでは、何時間同じ場所で糸を垂れても、釣れないものは釣れません。「どこで釣れるか」「どんな餌を食べるのか」など、自分から探究心を持って考え、動かなければいけない。この力は過去の正解を記憶するだけの勉強だけでは養えず、まさに自然体験のような機会で育まれます。

:自然は不確定要素が多いので、釣りも虫捕りも予想どおりにはなりません。それこそ、これといった正解がないんです。ここに何度もチャレンジすることで、粘り強く考え行動する力が養われます。それだけでなく、自然は子どもの好奇心をも刺激します。「もっと見たい、知りたい、経験したい」という気持ちは、粘り強さを開花させる大きな要素ですから、SDGsを学ぶ最高の教師は自然かもしれませんね。

「やればできる」と思えば能力も伸びる

――好奇心や探究心を持って取り組むと、何が起こるのでしょうか?

井澤:粘り強く取り組んだ結果、小さなことでも成功体験が積み重なると、「自分もやればできるんだ」という「自己効力感」が育まれますね。

:はい。自己効力感は「自分が動けば状況を変えられる」と思える力です。人間の脳には「可塑(かそ)性」が備わっており、取り組みさえすればどんどん変化して物事を習得します。その結果、運動や楽器の上達、記憶力の向上がかなうのですが、そもそも物事に取り組む動機として、自己効力感の高さは大きな役割を果たします。

――親子の対話の中で、親が気をつけたいことはありますか?

井澤:親に意識してほしいのは、「問いかけ方」です。ちょっとした違いで大きな差につながります。例えば子どもが何か失敗をしたときに、「上手くいかなかった原因は何だと思う?」と問いかけるのと、「上手くいかなかった原因は、あなたは何だと思う?」と問いかけるのとでは、問われた子ども側の思考が変わってきます。「あなたは」という主語がないと、「親の中にある正解は?」「何と言えば許してくれるだろう?」という思考になり、原因を自分で考えなくなる可能性があります。日本語は主語を省略しても通じてしまう言語です。しかし主語や視点が省略されることで忖度(そんたく)が生まれ、自分の意見を言えないケースはよくあります。これは大人の会議でも同じですね。

:今日から息子にも主語をつけて話そうと決めました。SDGsでの対話は、親子間の真のコミュニケーションツールになりそうですね。

井澤:コミュニケーションには、「自己対話」と「他者対話」の2つの段階が存在します。人と話す前に、自分の意見を認識する時間が必要なんです。自分なりの疑問があって初めて「私はこれが違うと思う」と相手に言えるのに、深い自己対話を求めずに他者対話が促される場面はよくあります。問いかけの中で主語や主体を示すことで、自己対話に入りやすくなるのですが、例えば学校のグループディスカッションでもつい、開始早々「さあ話し合って!」と言ってしまいがちですよね。

SDGs教育で「メタ認知」を鍛える

――SDGsを学ぶことは、子どもの成長にどうつながりますか?

:物事を一段上から俯瞰する「メタ認知」が育まれます。勉強で言うと、試験に合格するために目の前の問題をただ解くのではなく、例えば、「試験に対応するのにこの勉強法でよいのか、このペースで良いのか、もっとよい方法はないのか」などと考える力です。

井澤:メタ認知は、「行動変容と価値変容」の話にも通じます。SDGsのゴールは、人々の行動が、前提となる考え方に伴って変化することだと考えています。しかし、今の学校教育は行動変容に寄りすぎていて、子どもに対してすぐ「SDGs達成のためにどう行動しますか?」と聞いてしまうわけです。しかし、人はそれぞれの価値観に基づいて判断し行動していますから、根底となる価値観が変わらない限り、行動は変わりません。

自分の価値観を知る手がかりは「感情」です。「私はあの時うれしかった」「腹が立って許せなかった」など、何らかの体験を材料にするんです。したがって、感情を揺さぶるような体験をしなければ、自分の価値観も言語化できません。

:私の原体験は北海道での自然体験ですが、人間のルーツが狩猟民族だからか、生き物を捕った感動は大変わかりやすく、かつ大きいものでした。虫が苦手なら、魚、もしくは星でもいいかもしれません。好奇心は、勉強や趣味はもちろん人間関係や仕事に対しても抱くことができます。その結果、将来会社などでも上手くコミュニケーションできるんです。好奇心を養うきっかけとして、自然体験はいい場になるでしょうね。

「体験すれば学びになる」は、ある種の幻想

――自然体験の後に親がすべきことは何でしょうか?

井澤:一緒に振り返りをしてあげることですね。情報過多の日々にあって、子どもにはどんどん新しい体験が舞い込み、記憶が上書きされてしまいます。そうなる前に、「次はこうしよう」「またやろう」と次回につながる感情を形成させるんです。「体験すれば学びになる」というのは、ある種の幻想。体験することと、体験から学ぶこととは違います。また、振り返りの際には、子どもの言語化を補助してあげるといいでしょう。子どもに感想を求めると、「ヤバかった」という一言で終わってしまう場合があります。「どういうときに、どういう感情になって、それはなぜだったのか」とかみ砕きながら聞いてあげると、子どもは自分の価値観や、その体験からどんな課題を感じて何を学んだのかを認識しやすくなります。

:親は、その価値観を肯定するわけでも否定するわけでもなく、ただ目線を合わせようとする姿勢でいることが大事ですね。

井澤:親が評価者になって「いいこと言うね」と褒めてしまうと、子どもはその後も「いいことを言わなきゃ」という意識にとらわれてしまいます。いちばんシンプルなのは「教えてくれてありがとう」と感謝を伝えることではないでしょうか。

:そうですね。大人が「答えがない」ことをちゃんと意識したうえで、子どもと対等に考えることがSDGs教育に最も必要な観点かもしれません。

井澤:SDGsが目指すのは「改善」ではなく「変革」です。改善であれば減点主義の学び方でも効果があったかもしれませんが、過去の正解が未来でも正解とはいえない時代に入りました。むしろ、成功体験が多い大人ほど、過去の正解にとらわれて頭が固くなっている可能性もあります。常識に縛られない柔軟なアイデアを出せるのは、子どものほうかもしれません。大人は一度「正解思考」を捨て、SDGsを通して「未来に残したいものを探してみよう」くらいのスタンスでいるのがちょうどよさそうですよ。

グローブライドは、世界有数のフィッシング総合ブランド「DAIWA」で知られるスポーツ関連企業だ。このフィッシングを主力事業に、ゴルフやラケットスポーツ、サイクルスポーツの4事業を手がけている。またグローバル企業として、国内および海外(中国、タイ、ベトナム、英国)に生産拠点を有し、米州、欧州、アジア・オセアニアを含む世界4極で主力事業を展開している。

フィッシングの「DAIWA」とともに広く浸透してきた「ダイワ精工」から、創業50周年を機にグローバル企業への成長といった強い意志の下、2009年10月に現在の「グローブライド」へと社名を変更した。

withコロナ時代において、中核事業の「フィッシング」は「3密」を避けたアウトドアスポーツ・レジャーとして評価され、「ニューノーマル」が定着する中、その業績も好調だ。

環境活動にも積極的に取り組んでおり、CO2を吸収する森林保全や環境配慮型製品の開発なども推進している。

40年以上続くD.Y.F.C(ダイワヤングフィッシングクラブ)の運営にも力を入れており、未来を担う子どもたちと釣りを楽しみつつ、自然体験を通し「自分で考え、自分で工夫し、自分で動く」学びの場を提供している。

「グローブライド」という社名には、地球を舞台にスポーツの新たな楽しみを創造し、スポーツと自然を愛するすべての人に貢献したいという思いが込められている。

世界中の人々に人生の豊かな時間を提供する「ライフタイム・スポーツ・カンパニー」として、今後も地球を五感で楽しむ歓びを広め、アウトドアスポーツ・レジャーの未来を拓いていくユニークな企業だ。