政井マヤ×脳医学者「子育てと釣りの深い関係」

「自ら考え、学ぶ子に育つ」親と始める自然体験

左:政井マヤ氏 右:東北大学加齢医学研究所 教授 瀧靖之氏
近年の研究で、自然の中でのレジャーやアウトドアスポーツが子どもの脳の成長に影響を与えることがわかってきている。自然と戯れることが、子どもの発育にどう作用するのか。脳医学者の瀧靖之教授と、3児の母でフリーアナウンサーの政井マヤさんに、自身の経験や子育ての方針を交えつつ、解説してもらった。

自然でのレジャー体験は子にどんな影響をもたらす?

――お二人は子ども時代に、どのようなレジャーに親しんでいましたか?

父はスキーのインストラクター、瀧教授自身も1級の実力を持つ

瀧靖之(以下、瀧): 私は昆虫採集や釣り、スキーなどですね。当時北海道に住んでいたので、小さい頃から自然は身近な存在でした。

政井マヤ(以下、政井):私は神戸の六甲山のふもとに暮らしていて、野草や野鳥が好きな父と一緒によく山登りをしていました。ただ、当時は大好きな父と出かけたかっただけで、正直山登り自体の楽しさはわかりませんでした(笑)。でも、今でも山を見るとすごく落ち着くので、やっぱり山登りが好きだったんだなと今さらながら感じます。

――ご自身の自然体験から、子育てに生かしているポイントはありますか?

:ありますね。自然に触れさせることで、とにかく子どもの知的好奇心を育みたいと思っています。自然はありとあらゆる要素から構成されていて、興味が無限に広がります。知的好奇心を刺激するには絶好のフィールドです。

最近、自然がある環境を求め引っ越したばかりだそうだ

政井:わが家では夫の趣味が釣りやアウトドアスポーツで、子どもが1〜2歳の時から釣りに連れて行っていました。あと、夫も瀧先生と同じく昆虫採集が大好き。遠くにいるカマキリやバッタもすぐ見つけたり、ここにはこの虫がいるはず、と的中させるほどで、すごい才能だと思います(笑)。よく子どもと一緒に原っぱで時間を忘れて虫捕りをしています。

:それはすばらしいですね。 子どもは親の背中を見て育つので、誰より親が楽しむ姿を見せることが、子どもには最も効果的なんです。

政井:家にいるとゲームやテレビばかりになりがちですが、自然の中に連れて行くと、勝手にいろいろな発見をして、「これ何だろう」とちゃんと興味関心を持ってくれます。その間は「ゲームしたい」なんて言わないから不思議ですよね。それだけ夢中にさせてくれる自然って、すごいなと思います。

: その「熱中体験」こそ、自然が子どもに与える成長の1つだと思います。季節や時間帯が違うだけで、出合う景色や動植物が異なるので、いつ行っても飽きませんしね。これがゲームとのいちばんの違いだと思います。奥深いから、探求心がどんどん深まるわけです。

政井:自然にはリアルな美しさがあるのもいいですよね。

:そうですね。感動体験は、実は自己肯定感を高めるためにも大切な要素です。

政井:自己肯定感は、達成したり褒められたりして高まるものだと思っていましたが、こうした環境による感動体験でも高まるんですね。実体験だけでなくて、家の中で図鑑を見たりすることにも効果はありますか?

政井さんが自宅から持参してくれた図鑑や絵本。よく読み聞かせをせがまれるという

:一般的に、繰り返し目にするものには「単純接触効果」が生じます。これは物事に好意を持つ大事なきっかけです。感情と記憶には密接な相関があるので、何度も調べて覚えるうちに好意的な感情が出てくるのです。自然の中で実際に見たものへの好奇心と、図鑑を通しての接触とで記憶力が向上し、結果として学力にもつながるといえます。

政井:好きになれれば、そこからは楽しみながら学べますよね。子どもが少しでも興味を示していたら、それをさらに深めるもうワンアクションを、というのは心がけてきました。図鑑や絵本を買うのもその1つです。

年齢は関係ない!自然体験がもたらす育脳効果

――自然体験の中でも、釣りなどの比較的アクティブなレジャーには、脳にどのような効果がありますか?

:自然に対し、観察と分析を繰り返して試行錯誤をするので、脳がフル活用されます。釣りでいうと、魚を捕るためには、魚の生態や釣りのスキルのほか、水深や潮の流れなど、多くの記憶と論理を駆使しますから、深い思考力が鍛えられますよね。

とくに、子どもにとっては、生き物と関わりを持てるので体験が奥深くなります。知的好奇心を刺激するにはうってつけのレジャースポーツだと思います。

「魚ひとつから、知識は無限につながっていきます」

政井: 確かに子どもたちを見ていると、光の差し込む方向や水温だったり、パパといろいろなことを話しながら釣りをしていますね。ただ、実は私は最初、幼い子どもに釣りをさせることに少しためらいがあったんです。餌にするために生き物に針を刺さなくてはいけませんよね。常日頃から、子どもに「生き物を大事にしよう」と伝えているのに、矛盾してしまうのではないかなと。

:その気持ちはとてもよくわかります。

政井:でも、いざその場面になると、子どものほうから「かわいそうだけど仕方ないよね。お魚さんが食べてくれるもんね」と言ってきたんです。それを聞いて、子どもは親が思っている以上に、目の前で起きていることを理解し、自分なりに受け止めることができるんだと驚きました。

:そうした体験を通して、子どもは命への考えを深め、理解していくんですよね。

政井:2歳だった子どもが川でマスつかみをした時、捕まえたマスをものすごくかわいがって、ぎゅっと抱きしめたり、すりすり頬ずりをしたりしていたこともあります。そんなに愛着を感じるなんて、やさしいんだなと思っていたのですが、その後、焼かれたマスも「おいしい!!」とむしゃむしゃ食べていて(笑)。

「大人が思うほど、子どもはファンタジーの世界には生きていないんですね」 

: それは面白いエピソードですね(笑)。

政井:大人が勝手に「残酷だ」と決めつけて遠ざけるのではなく、子ども自身をもっと現実の自然に触れさせて、生き物同士のつながりを理解してもらいたいと思った出来事でした。ちなみに、何歳から、どのようなレジャーやアウトドアスポーツをするのが理想なのでしょうか?

:早ければ早いほどいいと思っています。私は子どもが歩き始めてすぐの頃から、山に連れて行って一緒に昆虫採集をしていました。好き嫌いを判断する前に「当たり前」の状態になっていることが望ましいです。2~3歳くらいで、物事の区別ができるようになったら、自然体験にプラスして一緒に図鑑を見るのもお勧めです。

子どもの暗記力や思考力、判断力は大人が考えるよりも高いので、何事も「まだ早い」と思う必要はなく、どんどん体験させることが大事です。

政井:逆に、遅すぎるということはありますか?

:それもないですね。脳には「可塑性」といって変化する力があるので、いつ始めても確実によい効果があります。大人も同じですよ。一緒に楽しむことでまだ力がつきます。

「熱中した体験」が学力向上につながる

――今の子どもたちは、勉強や習いごとで忙しく、自然体験が後回しになってしまう印象があります。どうお考えですか?

政井:私は、自然体験のほうが大事なのかなと思うようになりました。「勉強」には、後からでも学べることのほうが多いので、自然体験を優先させるべきなんじゃないかと。というのも、私の母がいわゆる教育ママで、私は勉強や受験をしっかり頑張ってきたんです。

でも、メキシコの親戚を訪ねたとき、子どもたちが山の別荘で乗馬をしたり、夏に海で目いっぱい遊んだり伸び伸び楽しんでいる姿を見て、「生きるために必要なことって勉強以外にもあるな」と実感したんです。

勉強ももちろん大事ですが、だからといって勉強だけでは人間として小さくなってしまう。一生懸命、塾に通って、受験をすること以外にもまだ大事なことがあるんじゃないかと。

勉強は嫌いではなかったが、「自分の子育ては、そこじゃないかも」と思ったと話す

:おっしゃるとおり、子ども時代の自然体験を通して非認知能力を鍛えることは、塾で認知能力を鍛えるより前に必要なことです。むしろ、自然に熱中した経験は、学力向上と相関関係にあります。

以前、書籍『東大脳の育て方』の監修で、東大生の話を聞く機会がありましたが、ほぼ共通して、幼少期に何かしらの熱中体験がありましたね。認知能力を重視して知識を詰め込む前に、「ハマること」の楽しさを伝えるほうがよいんです。

何かに熱中すると、調べたり人に聞いたりしますが、物事の極め方と勉強とはプロセスが似ています。その意味でも、とくに子どもが熱中しやすいレジャーやアウトドアスポーツを含む自然体験は、学力向上につながるといえます。

世の中にはいろいろなものがあるが「まず知らないことには楽しめません」

政井:勉強だけだと、どうしても頭でっかちになりがちですけど、子どもの頃から自然とのつながりを持つことで、人間としてたくましく育つのかなと感じます。

例えば、夫は幼少期から自然体験が豊富で、今でも暇さえあれば釣りに出かけるのですが、小さなことに左右されず、物事を大局的に見るタイプ。なぜそんなふうに落ち着いていられるんだろう、とずっと不思議だったのですが、瀧先生のお話を伺って、もしかしたら自然体験に育まれた部分もあるのかなと。

:そうだと思います。おそらく、自然体験を通して、ストレスマネジメントを体得されているのではないでしょうか。細かいことに動じないということは、脳が物事をストレスなく処理できているということ。自然には予想外の出来事がつきものですし、それに自分で対処しなければなりません。これに慣れている人は、人生をたくましく歩めるはずです。

「個体としての自分でなく、自然という大きな枠の中で自分を捉えられる」ことは強みになる

政井:誰しも困難やストレスと無縁ではいられないですし、人間はもろい存在なので、心が折れそうになることもあります。子どもたちには自然体験を通して、生き抜く力を養ってもらいたいです。つらいことがあったとき、ほかにこうした居場所があることも強みですよね。

:まさに、レジリエンス(困難を乗り越える力)を鍛えるには、自然体験が役立つという研究があります。また、好奇心がある人は趣味も多く、認知症リスクや、鬱(うつ)につながるストレスも下がるといわれています。

私も、医師、学者、経営者など、さまざまな仕事をしていますが、いずれも自分の好奇心に従って興味を極めた結果なので、大変だと感じたことはありません。難題に直面したとき、それを乗り越えられるかどうかは、好奇心の有無に左右されるといっても過言ではないでしょう。

「医学、研究、経営、自分の中ではすべてがつながっている」

政井:今回、先生の話を聞いて、夫の趣味である釣りが、子どもの脳に好影響だと初めて知ったのですが、子どもたちの様子を思い返して納得できる点がたくさんありました。

これからは、私ももっと積極的に取り組んで、家族の時間を楽しみたいです。とくに、コロナ禍では神経質になることも多いですから、子どもと一緒に自然の中に出て、伸び伸びしたいですね。

自分ができることを、子どもと一緒になって楽しむことが大事
子どもが自然体験を楽しむうえでお勧めしたいのが、グローブライドが運営するダイワヤングフィッシングクラブ(D.Y.F.C)だ。1976年の発足から40余年の歴史を持ち、「地球を感じ、いのちと出会い、のびのび育つ。」を合言葉に、釣りを通じて自然の豊かさやいのちの大切さを学ぶ機会を提供している。
 
実際のスクールでは、釣りに精通したグローブライド社員がコーチとして参加。 子どもの学年やキャリアに応じた5〜6人ずつの少人数制の指導で、年間を通して北海道から九州まで、全国約三十数カ所の釣り場を巡っている。
 
自然との触れ合いを通じ、釣りのスキルアップだけでなく、「自分で考え、自分で工夫し、自分で動く。」ことの大切さを掲げているのが魅力だ。大人も参加できれば楽しいとの要望に応え、一部のスクールでは大人も参加できる場を提供している。「安全と安心のために」を大切に考えるフィッシングスクールで、気軽に、そして何よりも楽しく、奥深い釣りの世界を体感してみてはいかがだろうか。
※2021年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響によりスクール開催は未定
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