文部科学省は2023年7月4日、「ChatGPT(OpenAI社)」「Bing Chat(Microsoft社)」「Bard(Google社)」といった対話型生成AIを小・中学校、高等学校の教育現場で児童生徒や教員が利用する際のガイドラインを公表した。利便性が高い半面マイナス面も語られているこれら生成AIの取り扱いをめぐっては議論があるが「現時点では活用が有効な場面を検証しつつ、限定的な利用から始めることが適切」としている。
使いこなす能力が必要な生成AI
ガイドラインは、生成AIに関する政府の議論や有識者からの意見を参考に、教育現場での生成AIの活用指針として策定された。
生成AIは現在、⽂章や翻訳、企画書などの作成から情報収集・分析に至るまで、ビジネスの世界ではすでに多岐にわたり活⽤されている。指⽰⽂(プロンプト)の⼯夫でより確度の⾼い回答が得られることが知られており、今後は精度の向上も見込まれるため、上手に活用すればより生産性が高まるとみられている。
一方、回答の中身には誤りや事実誤認を含むリスクがあるため、使いこなすためには真偽を見極める能力が必要で、最終的な判断は自身で行うという姿勢も求められる。
主要な生成AIサービスの規約には年齢制限がある。ChatGPTは13歳以上に限られ、18歳未満は保護者同意が必要だ。Bing Chatでは18歳未満は保護者の同意が必要。Bardの利用は18歳以上に限られる。こうした年齢制限に加え、大人でも使いこなすのが難しい生成AIを教育現場で児童生徒や教員が活用することには議論があった。
AI利用の基本は教育に効果的か否か
ガイドラインでは活用の適否について暫定的な考え方として「子供の発達段階や実態を踏まえ、年齢制限・保護者同意等の利用規約の遵守を前提に、教育活動や学習評価の目的を達成する上で、生成AIの利用が効果的か否かで判断することを基本とする」とし、「まずは生成AIへの懸念に十分な対策を講じられる学校でパイロット的に取り組むことが適当」とした。
そのうえで想定される具体的な活用例と不適切な例を提示。活用例としては、情報モラル教育の素材を作り出したり、グループの考えをまとめる際に⾜りない視点を⾒つけたりなどのほか、児童生徒の問題発⾒・課題解決能⼒を積極的に評価する目的でパフォーマンステストを⾏うことなどが記されている。
一方、不適切な例としては、児童生徒が課題のレポートや⼩論⽂、詩や俳句の創作物などを⽣成AIに作らせて提出することなどを挙げた。教員に対しても、児童⽣徒の学習評価や教育指導をする際の利用は不適切とした。
教員の対応工夫とAIリテラシー向上も要求
夏休みなどの長期休暇では、児童生徒が家庭で生成AIを使用することも考えられる。対策として、AIの利用を想定していないコンクールの作品やリポートをAIで作成したものを自身で作ったとして応募・提出するのは不正行為であることを指導するよう教員に求めた。また、提出物の内容を十分に理解しているかを確認するために口頭発表の機会を設けるなど、評価方法を工夫することも提案している。
ガイドラインでは教員のAIリテラシー向上の必要性も強調。今後、生成AIに対する懸念に十分な対策を講じられるように学校で知見を蓄積し、生成AIを児童生徒が学びに生かす力を段階的に高めていく方針だ。
調査元:https://www.mext.go.jp/content/20230704-mxt_shuukyo02-000003278_003.pdf