教育4大アプリ「Padlet」「Kahoot!」「Canva」「Flip」

GIGAスクール構想が3年前にスタートしました。その際、各学校にはGoogleのChromebook、AppleのiPadをはじめ、さまざまな種類の端末(ハード)が配備されました。それと同時に、ベネッセのミライシード、ロイロのロイロノートなど、多様な企業の教育サービス(ソフト)も実装されました。

坂本良晶(さかもと・よしあき)
京都府公立小学校教諭
Teacher Canvassador(Canva認定教育アンバサダー)
1983年生まれ。大学卒業後、大手回転寿司チェーン「くら寿司」に勤務し、店長として全国売り上げ1位を記録。教員を目指し退職後、通信制大学で教員免許を取得。「教育の生産性を上げ、子どもも教師もハッピーに。」を合言葉に日々発信するTwitter「さる@小学校教師」のフォロワーは4万人超。2023年5月Canvaから認定を受けTeacher Canvassadorに就任。著書に『生産性が爆上がり!さる先生の「全部ギガやろう!」』『さる先生の「全部やろうはバカやろう」』(ともに学陽書房)などがある

しかし、ここである問題が生じます。それは、各自治体のハードやソフトでしか使えない機能やサービスに依存していると、ICTを活用した教育技術がほかの自治体の先生にはうまくシェアできず、広まらないということです。

現在使用しているソフトやハードに依存せず教育実践を広めていくには、どうすればいいのか。この問題の解決策として、どの自治体でも使えるアプリを活用していくことが必要、またその条件として以下の3つが求められると考えました。

1. 契約なしに無料で使えること
有償サービスとなると、議会を通じて予算を確保することからスタートしなければならないため

2. 基本的にアプリをダウンロードしなくても使えること
アプリのダウンロードにも自治体の承認を受ける必要がある場合があるため

3. 発達段階を問わず使えること
低学年でも使えるアプリが望ましい

これらをおおむね満たすのが、「Padlet」「Kahoot!」「Canva」「Flip」という4つのアプリでした。この4つのアプリを使った具体的な実践を全国に発信することで、全国の教室に1人1台の端末を活用したクリエーティブな授業が展開される――。そう考え、僕は実践を重ねてきました。

ここからは、この教育4大アプリともいうべき4つのアプリについての概要と実践例をお伝えします。

教育用掲示板アプリ「Padlet」とは?

Padlet(パドレット)は、教育用掲示板アプリです。さまざまな形式の掲示板に、子どもたちがそれぞれの成果物を投稿してシェアしたり、フィードバックを送り合ったりします。

例えば、漢字の宿題に自主性を持たせる取り組み(けテぶれ学習)の漢字ノートをPadletに投稿して学び合う時間を取ったりしています。このように、お互いに評価し合う「相互評価」を可能にするのがPadletの強みだといえます。

教育用掲示板アプリPadlet。写真は漢字ノートをPadletに投稿することで、互いに学び合ったり評価し合うことが可能に

教育用クイズアプリ「Kahoot!」とは?

Kahoot!(カフート)は、教育用クイズアプリです。さまざまなモードが存在し、クラスの友達と協力したり、対戦したりしながら、繰り返し問題を解くことで知識や技能を楽しく習得させることが期待できます。

例えば、算数の授業はじめの5分間、同じ問題に取り組むような活動が効果的です。6年生算数「文字と式」では、文章からxとyを使って立式する問題に取り組み続けました。

教育用クイズアプリKahoot!。6年生算数「文字と式」で、文章からxとyを使って立式する問題に取り組む様子

デザイン作成アプリ「Canva」とは?

Canva(キャンバ)は、もともとはさまざまなデザインができるビジネス向けツールでしたが、近年は教育用として広く使われ始めています。データをクラス全員と共有することにより、共同編集ができるようになります。

例えば、その学年で習うすべての漢字を使ったカードをクラス全員で分担して作成する活動をしました。このようにCanvaを使うことで、1つのデータを複数人で作成できる「共同編集」およびタイムリーにお互いの活動を見ることができる「相互参照」を可能にすることができます。

データをクラス全員と共有すれば共同編集、相互参照が可能なCanva

動画共有アプリ「Flip」とは?

Flip(フリップ、旧称:Flipgrid)は、教師や子ども同士で互いにショートビデオを共有できるツールです。1分程度の時間を設定し、セルフィー(自撮り)で課題について話したり、必要な資料や好きな素材を挿入したりして伝えることができます。

これまで、日本の教育では「書く」というチャネルにより表現することに注力していました。もちろん、それはそれで大切なのですが、今後子どもたちが実際に活用するチャネルの多くは「話す」なのです。自分の声で自分の考えを伝えることに、重きを置いています。

外国語の授業では、自己紹介のショートムービーを作ってFlipにアップしてシェアする活動をしました。この児童はドラゴンが好きで、また絵を描くことが得意なことを含めた英語での自己紹介をしました。ドラゴンや絵の具といった素材を使うことで、より豊かな表現になります。

動画を共有できるアプリFlip。写真はドラゴンが好きで、また絵を描くことが得意なことを含めた英語での自己紹介動画

1人1台端末が目指すゴール

私は、研究主任とICT主任を務めていて、勤務校では「ICT×プロジェクト学習」をテーマに研究をしています。

ICTのCはCommunicationのCです。授業の中で知識や技能を獲得したり、考えたことを表現することを通じ、子ども同士が多くのコミュニケーションをする中で、学び合うこと、高め合うことができたり、よりよい人間関係の醸成へとつなげたりすることを狙いとしています。また、ペーパーテストがゴールではなく、プロジェクトの達成をゴールとする学習に取り組んでいます。

現在、私のクラスでは5月に修学旅行で三重・志摩スペイン村に行くことをきっかけとし、スペインをテーマに「Hola!Spain!」というプロジェクト学習をしています。これはスペインについてテーマごとにチームに分かれ、最終的には体育館のスクリーンで全校児童にKahoot!でスペインクイズをすることにより、みんなで楽しみながらスペインについて知ってもらうことがゴールです。

そのためにCanvaの共同編集でテーマごとにスペインの地図を作り、校内に張り出しました。また、Flipで1人1本のPRムービーを作るチャレンジもしました。その際、ヒントを得るために、スペインのバルセロナ日本人学校の6年生とつなげて、「今スペインで人気の食べ物は何か?」といった質問をする子どもの姿も見られました。ライブではなく非同期なので、時差や距離があっても交流することができるのがICTの強みでもあります。

スペインをテーマに「Hola!Spain!」というプロジェクト学習を実施。体育館でKahoot!を使い全校児童にスペインクイズを実施した

1人1台端末が目指すゴールは、すべての子どもが個別最適な学び、そして協働的な学びを両輪とし、よりクリエーティブな学びを展開していくことにあると考えます。まだまだ発展途上ですが、21世紀をよりたくましく生きるための力を、授業を通じて授けることができればと願っています。

(写真:すべて坂本氏提供)