歩くと気づく「田園調布」に空き家が増える事情

渋沢栄一の街づくりに欠けていた視点とは

田園調布の駅舎。高級住宅街の代表格として挙げられていたこともある田園調布だが、近年は歩くと空き家や空き地が多いことに気がつく(筆者撮影)

2021年2月から始まる大河ドラマの主人公であり、2024年度に一新される1万円札の顔となる渋沢栄一はしばしば日本資本主義の父と称されるが、彼は同時に日本の住宅地の父でもある。

19世紀末、都市労働者の労働・居住環境改善のためにイギリスのエベネザー・ハワードが提唱した都市と農村の魅力を併せもつ理想都市「田園都市」の概念などの一部を日本に輸入、1922(大正11)年に洗足田園都市、翌1923(大正12)年に多摩川台住宅地(現在の田園調布)を開発したのが、渋沢らが設立した田園都市株式会社だったのである。

ことに田園調布は1980年に漫才師の星セント・ルイスが放った「田園調布に家が建つ」のネタで知られるようになり、ほかに同等(以上も含め)の住宅地があるにもかかわらず、高級住宅地の代表格として知られるようになった。だが、近年渋沢が脚光を浴びる一方、田園調布の凋落を指摘する声をよく聞く。空き家や空き地が増え、かつて理想とされた街並みが崩れているというのである。

同級生の多くが出ていった

空き家が増えるのも当然、田園調布は住み続けられない場所だと話すのは、父の代からの住民である内海健太郎氏だ。地元の大田区立田園調布中学校の同級生は150人。半分の75人が男性だとして、多くは相続で家を持ちこたえられず、50代半ばの現在、今も地元に住み続けているのは5人ほどしかいないのではないか?という。

長らく空いていた土地に家が建つ動きもあるが、それよりも空き地が出るスピードのほうが早いのが現実(筆者撮影)

「父は昭和に成功した企業の社長で息子は東大や慶應などを出て大手企業サラリーマンというパターンが多かったですね。田園調布の相続税は30代、40代のサラリーマンではとうてい払えない。事業を継いでいても会社がうまくいっていなければ同じ。私の場合は住宅関係の事業を継承しただけでなく、事業分野を拡大した経営をしており、それで住み続けることができましたが、総資産の3分の1は一度の相続で消えました」

土地価格が高く、相続税が多額に及ぶだけではない。土地の利用について規制が厳しく、それが不動産継承のハードルになっているという声も多い。

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