増殖する「中高年派遣」34万人の悲鳴 法改正を逆手にとった「派遣切り」も

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一瞬、頭の中が真っ白になり、何を言われているのかわからなかった。我に返って抗議すると、社長はこう言った。

「3年あれば、辞めた後の準備期間としては十分だろう」

後日、このことを派遣会社に伝えると、しれっと言われた。

「先様がそうおっしゃっているので、私どもは法令に則っているだけの話ですから」

「先様」とは派遣先のことだ。

資格が10件あっても…

Dさんは証券2種外務員、ビジネス能力検定2級、秘書技能検定2級など10件の資格を持っている。だが、いくら資格を持っていようが、還暦間近になったDさんに今と同じような派遣先があるとは考えにくい。3年後、仕事はあるのか、体力的に働けるのか、医療費が余分にかかるのではないか。日雇い派遣でつないでいくしかないのか──。日々、不安に押しつぶされそうになりながら暮らしている。家族には心配させたくないので、あまり詳しくは伝えていない。Dさんはこう話した。

「仕事を奪われるということは、収入が途絶えて生活の基盤を失うということです。法律が改正されたからといって、今まで頑張ってきた人間を切るのは、非人間的な行いだと思います」

中高年派遣社員は今後も増えるだろう。これは、明日の正社員の問題でもある。

(文:編集部・野村昌二)

※AERA 2016年2月15日号

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