「ブルゾンちえみ」が圧倒的な支持を得た理由 すべては計算し尽くされた打ち出し方だ

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フジテレビ系連続ドラマ「人は見た目が100パーセント」制作発表イベントに登壇したブルゾンちえみ=2017年4月10日(写真:日刊スポーツ新聞社)

お笑い界では毎年のように新しい芸人が出てきます。そんな中で、間違いなく2017年前半の主役と言えるのが、女性ピン芸人のブルゾンちえみさんです。

彼女は、1月1日放送の「ぐるナイ!おもしろ荘2017」(日本テレビ系)に出演して、優勝を果たしました。そのときに演じた「キャリアウーマン」のネタが視聴者の間で大反響を呼んだのです。そして、人気は瞬く間にうなぎ上り。4月13日に始まったドラマ「人は見た目が100パーセント」(フジテレビ系)でも主要キャストの1人に抜擢されました。ドラマ初出演にもかかわらず、演技のほうもなかなかのものだと評判です。

昨年末の時点では、ブルゾンさんのことを知っている人は世の中にほとんどいなかったはずです。テレビに本格的に出始めてからほんの2~3カ月のうちに、彼女は圧倒的な人気を獲得していきました。ブルゾンさんが多くの人から支持されている最大の理由はもちろん、最初に披露したネタが面白かったということに尽きると思います。

これほど短期間にブルゾンさんが大ブレークした理由

しかし、単に面白いというだけでは、これほど短期間で華々しい成功を収めることはできなかったはずです。ここでは、ブルゾンさんが大ブレークした理由として3つの要素を挙げてみたいと思います。

第1に、ブルゾンさんのネタにはメッセージ性がある、ということです。彼女が演じているのは、仕事にも恋愛にも妥協せず、エネルギッシュで意識の高いキャリアウーマンです。元カレのことが忘れられず、恋に臆病になっている若い女性に対しては、地球上に男は「35億」もいるから大丈夫、と励ましの言葉を送る。また、自分から狩りに出なくても待っていれば男は自然と寄ってくると断言し、「ああ、女に生まれてよかった」とつぶやく。自らが女性であることを堂々と肯定するこのポジティブ思考が、世の女性たちに勇気を与えました。

私の知るかぎり、ブルゾンさんのネタは女性の支持率が高い気がします。法律の上では男女平等の社会になり、女性は男性並みの働きぶりを求められるようになっていますが、結婚や出産のことを考えると20代後半から30代前半の女性には何かと悩みが尽きません。仕事と恋愛のどちらを取ればいいのか? どっちも取りたいけどそんなことは可能なのか? いわゆる「タラレバ世代」の女性の前にはそんな壁が立ちはだかっています。その層の女性に対しては、ブルゾンさんの投げかけた肯定的なメッセージが特に深く刺さっているのではないでしょうか。

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ラリー遠田 作家・ライター、お笑い評論家

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らりーとおだ / Larry Tooda

主にお笑いに関する評論、執筆、インタビュー取材、コメント提供、講演、イベント企画・出演などを手がける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など著書多数。

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