政府が年内に改定する安全保障関連3文書に、原子力潜水艦(原潜)保有の「調査」や「研究」を盛り込む案が浮上している。導入には慎重な意見もある。乗員や予算をどう確保し、開発・建造にどれほどの期間を要するのか。検討すべき課題は多い。
本稿では、元潜水艦隊司令官2人が専門誌で公表した具体案と試算をもとに、原潜導入の実現可能性を検証する。
「ヒト、モノ、カネ」の3つの条件
高市早苗首相は10月14日の衆院予算委員会で、原潜の導入を含む海上交通路の防衛について「具体的かつ現実的な検討を深めていく」と述べた。
これに先立ち、海上自衛隊トップの齋藤聡海上幕僚長は9月15日の記者会見で、筆者の質問に対し、原潜など新たな装備の導入には「いわゆるヒト、モノ、カネの側面」での検討が必要だと指摘した。人員の育成、必要な装備や基地のシステム、長期的な維持・整備の費用を挙げ、「ヒト、モノ、カネ」のどれが欠けてもダメだと強調した。
では、日本はこの3つの条件を満たせるのか。戦力化までにどれほどの時間がかかり、その間、既存の潜水艦戦力を維持できるのか。
検討の手がかりはすでにある。元潜水艦隊司令官の矢野一樹氏と小林正男氏が、専門誌『世界の艦船』(海人社)で具体的な構想と試算を示しているからだ。いずれも個人の推定で、政府が検証したものではないが、議論の出発点にはなる。
矢野氏は同誌2026年1月号で、日本が建造する原潜を、垂直発射装置(VLS)10基を備えた排水量約6000トンの攻撃型と想定した。原子炉は小型軽水炉で、燃料には濃縮度20%以下の低濃縮ウランを使う。保有数は、中国正面に1〜2隻、北朝鮮・ロシア正面に1隻を常時展開する前提で8隻。現在の通常動力型22隻と合わせて30隻体制とする。
矢野氏はまた、過去に海上自衛隊内で原潜保有の内部検討が複数回行われたことを明かしている。大勢は否定的だったが、原潜を必須とする見解は「少数ながらも海自内で維持されてきた」という。
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