前述の事件においても、顧客の個人情報が流出したものの、銀行内部の資金が動かされるような深刻な事態は発生していない。つまり、銀行の勘定系には侵入されていないようだ。
問題は、現代の銀行が多数の外部サービスと結びついていることだ。例えば、スマートフォンからの振り込み、インターネットバンキング、ネットショッピングの代金決済などはインターネットを利用している。これらを全面的に廃止すれば、銀行業務の利便性は著しく低下する。
しかし、勘定系そのものをインターネットから隔離し、外部サービスとの接続を厳格に制御することは可能だと考えられる。
利便性と依存性を区別すべし
金融機関の方式は、ほかの業種にも拡張できる。これまでの企業の情報化は、企業内部のあらゆる情報を接続し、リアルタイムで共有することによって、生産性を高める方向に進んできた。製造業のIoT(モノのインターネット)化、流通業のPOS(販売時点情報管理)革命、さらにAIエージェントによるリアルタイム経営などは、この延長線上にある。
とはいえ、情報を共有することとすべてのシステムをインターネットに直接接続することは、同じではない。
独立した社内ネットワークでも、リアルタイムで生産や在庫を把握することは可能だ。AIも社内設備で動かせば、インターネット接続なしに一定の分析や自動化を実行できる。
もっとも、設備投資や保守費用は増加し、クラウド型AIと比べて利用できる機能が制限される場合もある。ここで重要なのは、インターネットの利便性を維持することと、インターネットに依存しなければ操業できない企業構造から脱却することを、区別するという考え方だ。
経済産業省も工場やサプライチェーン全体の安全対策を進めているが、その基本はリスクに応じた防御の強化であり、企業システム全体の完全隔離を一律に求めるものではない。


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