AIによって、サイバー攻撃が「専門家による個別的な犯罪」から「大量に自動実行できる犯罪」へと変化し始めている。上述した事例は、問題のほんの始まりであり、これからさらに拡大するおそれを否定できない。
これまでサイバー犯罪は、個々の企業がセキュリティー対策を強化することで対処する問題だと考えられてきた。しかし、AIによって攻撃が高速化・大規模化すると、企業ごとの対策だけでは十分でなくなる。金融機関、通信事業者、政府などが攻撃情報を共有し、被害の拡大を防ぐ体制を整備する必要がある。
この変化は、インターネットの利用を当然としてきた社会のあり方を、根本から再検討する必要性につながる。
インターネットは、安全性の点で極めて問題が多いシステムだ。それは最初からわかっていたのだが、われわれはそれを受け入れて、システムを作り上げてしまった。ここに至って、その危険性が極めて明白な形で現れているのである。「抜け穴を塞ぎ、防御を完全に」と言うだけでは守り切れなくなっている。
最重要システムはインターネットから隔離せよ
こうした状況下で必要なのは、企業の情報システムの抜本的な組み直しだ。すなわち、情報システムのうちインターネットに接続しなければならない部分をはっきりさせ、最も基幹的な部分はインターネットから隔離すべきではないだろうか。
まず、銀行の場合を考えよう。銀行の場合の中枢的なシステムは「勘定系」と呼ばれ、預金残高の管理、貸出金の記録、利息計算などを行う。
勘定系は、インターネットが普及する以前から存在していた。そして、銀行内部のコンピューターと専用通信網によって処理できる。つまり、インターネットなしで運用ができる。
銀行間の資金移動についても、「全銀システム」や「日銀ネット」など、インターネットとは区別された金融機関向けの通信基盤が存在する。したがって、銀行預金を管理する中心的なシステムは、一般のインターネットに直接接続する必要がない。これはサイバーセキュリティーを考えるうえで重要な事実だ。


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