説明をはじめると、山本さんは「もしかして、これ?」と一冊の本を手に取った。山田医師の著書『糖質疲労』だった。昼食後の強い眠気が気になり、新幹線のホームで買って読んでいたという。
浅沼さんは目を見開いた。
「それです!」
まったくの偶然だった。興味を持った山本さんは、「料理長を説得するよ」と協力を申し出た。
同じように、知り合いの料理人に一人ずつ声をかけ、さらに、内藤喜文町長にも参加を呼びかけた。湯河原町は、人口約2万2000人のコンパクトな町で、住民と行政の距離も近い。「来てくれたらいいな」と気軽な気持ちで頼んだところ、内藤町長は二つ返事で参加を決めたという。
町長が、自分の数値で納得した
2024年9月、料理人や内藤町長ら約10人が集まり、「ふきや」で最初のロカボ勉強会が開かれた。
メニューは、山田医師が監修した「ふきや」の会席料理。出す順番を変えたり、糖質の多い素材の量を減らしたりして、秋の味覚を残しながら血糖値が上がりにくい献立に整えたものだ。
当日は、参加者もリブレを装着。シャンパンで乾杯し、脂質やタンパク質を含む料理から食べ始め、糖質の多い料理は後半に楽しんだ。会席料理の内容を大きく変えなくても、食べる順番と量を工夫することで、血糖値の上昇を抑えられることを、全員が自分の数値で確かめた。
勉強会から1週間ほど経った頃、浅沼さんは内藤町長から感謝を伝えられた。
「呼んでくれてありがとう。すごく勉強になった。町でも広めたい」
ここから、ロカボを町全体へ広げる動きが始まった。


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