10月10日に大阪府泉佐野市と泉大津市で発生しただんじりの横転死亡事故(2人死亡、16人重軽傷)をきっかけに、SNS上では「危険性をわかってやっている趣味なのだから公的医療保険を使うな」「治療費は全額自腹にすべきだ」といった批判的な声や議論が上がっている。
人々の突き放した態度の背後にあるもの
ここには、2000年代以降の日本社会を覆い続けている「自己責任論」とまったく同型の異質な他者を排除するメカニズムが作動している。その一方で、実は当事者の側にも祭りに過激なものを求めてしまう心理的な動機が存在することもまた指摘すべき事実である。
「自ら好んで危険な祭りに飛び込んだのだから、救急車を呼ぶな、医療費は自己負担しろ」という糾弾は、かつて大問題になった「危険地帯へ自らの意思で行ったジャーナリストを救出するために、公費を使うな」というバッシングと、根底にあるロジックが一致している。
生活習慣病患者に対する「自業自得だから透析費用を全額自腹にせよ」という主張とも似たところがある。「個人の健康管理の失敗、あるいは意図的なリスク選好によって生じた損失を、税金や社会保障で補填させるな」というリスク社会論の内面化だ。
この突き放した態度の背後には、まず近代社会の考え方に基づく「社会契約とフリーライダー(タダ乗り)への反発」がある。人々は、日常の安全を守るために無数の規則に従い、息苦しいコンプライアンスを受け入れ、感情や身体の暴走を自制して生活している。そうした「我慢」と引き換えに保障されるのが、不測の事態に頼る公的サービスとの認識がある。
ところが、批判者の側からは、祭りの参加者が一般社会のルールに囚われず、法外な熱狂という「特権的なレジャー」を享受しているように映るだけではなく、ひとたび事故が起きれば、自分たちが普段から規律を大切にし血税で維持している「公的リソース(救急医療)」を取り崩す存在に見える。この非対称性が、人々に強烈な「不公平感」と「フリーライダーへの道徳的な処罰感情」を招来するのだ。


※ログイン後、コメント入力が可能です。