1作目は『ドリフターズ』(平野耕太、少年画報社)です。
関ヶ原の戦いで「島津の退き口」の最中にいた島津豊久が、エルフやドワーフが暮らす異世界に飛ばされます。そこで、本能寺の変で死んだはずの織田信長や、源平合戦の弓の名手・那須与一たちと出会います。古今東西の英雄が「漂流者(ドリフターズ)」として集まり、国を奪い、強大な敵と戦っていく作品です。
「歴史上の人物が異世界でバトルする話でしょ?」と思うかもしれません。たしかにアクションも迫力満点です。ただ、僕がこの作品をおすすめしたい理由は別にあります。「技術の革新が、世界をどう変えるのか」がとても丁寧に描かれているからです。
例えば信長は、異世界でも鉄砲を作り始めます。火薬の原料になる硝石をどう集めるか、硫黄をどう手に入れるかまで考え、ドワーフたちと量産に取りかかります。
ところが、弓の名手である与一やドワーフたちは不思議がります。「弓や石弓で十分ではないか」。弓は音も立てずに敵を射抜けるし、腕のいい射手なら命中率も高い。わざわざ大きな音と煙が出る鉄砲を、苦労して作る理由があるのか、というわけです。
これに豊久が答えます。鉄砲の轟音は「お前を狙っているぞ」という名乗りのようなもので、敵をおびえさせる。そして何より、鉄砲は訓練が早く済む。昨日まで農民だった者が、翌日には鎧武者を倒せる。
弓で戦えるようになるには、長い年月の鍛錬が必要です。与一のような達人は、そう簡単には育ちません。一方、鉄砲は引き金を引けば、誰でも一定の殺傷力を持てます。信長はさらに心の中で、「引き金一つで誰でも兵になる」ことの意味を考えます。それは、民衆全体が兵士になる道につながっている、と。
過去の人の目線で「そのすごさ」がわかる
ここまで読むと、教科書で習った内容がつながってきませんか。長篠の戦いでの鉄砲の大量使用や、兵農分離、そしてのちの時代の「国民皆兵」や徴兵制。武器の変化は戦い方を変え、誰が戦うのかを変え、最終的には社会のあり方そのものを変えていく。この大きな流れを、教科書の数行よりもずっと実感を持って理解できます。
もう一つ印象的なのが、遠く離れた相手と連絡が取れる「球」を信長が目にする場面です。異世界の魔術師たちは、それを研究報告に使う便利な道具としか思っていません。でも信長は驚きます。伝令がいらない。何より、伝達に時間差がない。離れた部隊同士がすぐに連携できる。これはとんでもない代物だぞ、と。
そして信長は、自分たち漂流者が何者なのかに気づきます。漂流者とは「技術の渡来者」であり、「思考の差異者」なのだ、と。 同じ道具を見ても、どんな価値を見いだすかは、その人の生きてきた時代や価値観で変わります。
これは、歴史を勉強するうえでとても大事な視点です。電話やインターネットが当たり前の僕たちには、「すぐ連絡が取れること」のありがたさがわかりにくいですよね。
でも、馬で走って伝令していた時代の人から見れば、それは戦争のルールを根本から変える技術です。
過去の人の目線で技術を見直すと、その技術がなぜ「革命」と呼ばれたのかが見えてくる。『ドリフターズ』は、そんな価値観の違いを教えてくれる漫画です。



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