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沖縄で12年ぶりの保守系知事が就任…選挙戦を見た台湾研究者が覚えた「アイデンティティからエコノミーへ」の既視感

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選挙活動の盛り上がりは日本本土よりも台湾に近かった。写真は玉城デニー氏の演説(写真:筆者撮影)
  • 前原 志保 武雄アジア大学准教授・九州大学大学院人間環境学研究院 D-Be 部門学術協力研究員

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9月30日、沖縄県知事に古謝玄太氏が就任した。12年ぶりの保守派知事で、史上最年少、初の1972年の沖縄復帰後の生まれと、沖縄政治史においても歴史的な意味を持つだろう。その知事が誕生するまでには誹謗中傷も大きな問題となった激しい選挙戦があった。

筆者は政治社会学を専門とし、主に台湾の選挙を20年以上見てきた。沖縄の選挙戦を現地で観察したのは今回が初めてである。ただ、沖縄県知事選には、不思議な既視感があった。

台湾の選挙を思い起こさせる熱量

那覇空港に到着後、ゆいレールでホテルの最寄り駅まで行った。駅の下に広がっていたのは、道路沿いに遠くまで延々と連なる幟旗、「Vロード」と呼ばれる街頭活動の光景だった。候補者の演説に合わせて、多くの人が集まり、声を上げる。候補者を取り囲み記念写真を撮る。選挙が政治家や政党だけのものではなく、一般の人々が参加する一種の「祭り」になっている。その熱量は、高い投票率で知られる台湾の選挙を思い起こさせた。

ゆいレール・旭橋駅近くで行われていた古謝陣営による「Vロード」(写真:筆者撮影)

今回、私が沖縄を訪れたきっかけは研究会があったのもあるが、県知事選が大きい。近年、日本で「台湾有事」という言葉を耳にする機会が増えるにつれ、台湾を専門とする1人として沖縄のことが以前にも増して気になるようになっていた。

「台湾有事」が起きれば沖縄はどうなるのか。南西諸島は日本の防衛の「最前線」になる、としばしば語られる。しかし、その「最前線」には当然ながら人が暮らしている。「台湾有事」の可能性について専門家がどれだけ慎重に論考を書いても、それをはるかに上回る量の玉石混淆の情報がSNSに流れ、専門家の言葉さえその中に埋もれてしまう。

一方で、沖縄で行われる議論で、台湾について発せられる言葉に違和感を覚えることもあった。台湾海峡の緊張をめぐり、「日本を戦争に巻き込まないでほしい」「台湾さえ静かにしてくれればいい」「中国とちゃんと話し合えばいい」という趣旨の意見に私自身が出会うことがある。

沖縄戦を経験した土地で、再び戦争に巻き込まれることへの恐れが強いことは理解している。しかし、台湾を長く研究してきた者として、その恐れが、台湾が緊張を作り出しているかのような語り方につながることには同意できない。中国が台湾に対する武力行使の可能性を放棄していない以上、「話し合えば解決する」と簡単にいえる問題でもない。

それと同時に、自分の側にも問いを返してみる。台湾側は沖縄のことをどれほど知っているのだろうか。台湾からは毎年多くの観光客が沖縄を訪れる。沖縄を訪れる海外観光客で最も多いのは台湾だ。今回の滞在中もホテル近くのコンビニや空港で多くの台湾人旅行者を見かけた。しかし、沖縄戦、その後の米軍統治、本土復帰、そして現在まで続く基地負担について、台湾社会はどれほど理解しているのだろうか。そうした問いを筆者は抱えて沖縄に入った。

「切迫感」と「明るい雰囲気」の2つの選挙集会

実際に古謝氏と玉城デニー氏の両陣営を見て、まず驚いたのは集まっている人々と会場の空気の違いだった。玉城氏の演説会では、テーマカラーのオレンジのリボンを身につけ、自作のプラカードを掲げた高齢者や小さな子どもを連れた女性たちが目についた。そして会場には、どこか悲壮感があった。今回負ければ何かが終わる――そんな切迫感さえ感じた。

玉城氏自身の演説は最後まで人の興味をひきつけ、感情を揺さぶるものだった。聴衆との距離を縮め、沖縄の経験を自分たちの物語として語る力がある。台湾の選挙でも、演説の能力は大変重視される。政策を提示するだけでなく、候補者が聴衆と1つの未来のシナリオを共有できるか。それ自体が政治家として重要な能力となる。

玉城デニー氏の演説に詰めかけた支持者たち(写真:筆者撮影)

対照的だったのが古謝氏の陣営である。こちらでは20代から40代くらいの男性集団が目についた。他方で若い女性たちが仲間同士で楽しそうに記念撮影をしている光景もあり、どこか「推し活」にも似ていた。こちらの会場は「これから何かが変わる」という明るい雰囲気に包まれていた。

古謝陣営の演説に集まった人たち(写真:筆者撮影)
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