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「日本人男性とタイ人女性なら手続きできる。でも逆は前例がないから無理だ」
タイの役所の窓口で、スライ富士子さんの提出した婚姻届は受理されなかった。父の激高、母と姉の反対。それを「駆け落ちも辞さない」覚悟で押し切って、ようやくここまで来たのに…。最後に立ちはだかったのは、家族ではなく役所だった。30年以上前、日本人女性がタイ人男性と結婚することは、それほど「前例がない」ことだったのだ。
前編では、跡継ぎとして妻の家業に入るも義母に追われ、それでも、義母の近くにいたほうがよいだろうとタイ料理店を開いた夫スライ・ジャトロンカモンさん(呼び名はジャックさん)と、代わりに社長になった富士子さんの現在を追った。後編は、一つの消しゴムから始まった出会いにさかのぼる。
消しゴムを拾った瞬間、二人同時に「ビビビ」
さかのぼること39年前。ジャックさんは20歳のときに来日した。語学学校で日本語を学んでいたある日、授業中にふと後ろを向いたら、後ろの席に座っている女性が何かを探していた。
ジャックさんは消しゴムが落ちていることに気づき、それを渡した。その女性が「ありがとうございます」と言って目があった瞬間、ジャックさんは電波がピタッと合ったような感覚を覚えた。
その人こそが、後にジャックさんの妻となる富士子さんだ。富士子さんは語学学校で日本語教師として働き始めたばかりで、他の先生の授業を見学していた。
実は、富士子さんもこのとき、「ビビビ!」とくるものを感じたという。
「この人は、何か縁のある人なのかもしれないと思いました」


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